メンバー:L A山Y秀、T己Y郎、Y田S、T塚Y子
タイム:7月30日(金)夜出発
– 7月31日(土)T4ビバーク
– 8月1日(日)雲稜登攀、12:00終了同ルート下降、上高地下山
【T塚記】
7月31日~8月1日の日程で、屏風岩・雲稜ルートに行ってきましたので報告します。
前夜に沢渡まで入り、31日朝、平湯経由で上高地へ。
事前情報で、一般的なアプローチの渡渉点は増水していて渡るのが大変だとの事で、A山さんが東壁ルンゼ下見に行った時に見つけておいてくださった倒木を使って渡渉。ヤブこぎがしばらくあり、1ルンゼ押し出し到着。
白い岩のキレイなルンゼを登ってヤブを詰めるとT4尾根取り付き到着。T4尾根取り付きには雪渓(高さ5m)が残り、ひんやり涼しかった(というか、待機中は寒かった)。小さな岩小屋で装備を整え、T4尾根に取り付く。
T巳-Y田P、A山-T塚Pに分かれての登攀。T巳-Y田Pはつるべ、A山-T塚PはまたもやA山さんがポーターを買って出てくださり、T塚がリード。T4尾根はアプローチではあるが、実際は登攀して上がる。荷物を上げる分、登りにくい(し、結構難しい)。悪そうな箇所にはフィックスロープがあるが、古いのであまり信用ならない。
T4尾根終了点には、木にきちんと懸垂支点がつけてあった。
T4は私たちパーティーの荷物を置き、手足を伸ばして寝られる程度の広さがあるテラスで、ガイド本に載っていたようなキジ臭は特に感じなかった(今シーズンはまだあまり人が入っていないのか)。
岩の支点と木にロープを渡し、ツェルトを2張、直列に張る。スペースの関係上、A山さんと私はロープにセルフビレイをつけて就寝。
8月1日。
予定していた起床時間に目を覚ますも、寒くて動けず。予定より遅れて朝食を摂り、午前6時過ぎに登攀開始。
A山-T塚P先行。
1P目:A山リード(Ⅴ)
凹角を登り、ピナクルテラスへ。流れるようなクライミングと手際で、さすがと感じる。
2P目:T塚リード(Ⅴ+)
取り付くも、ルーファイでモタつく。あまりに時間がかかったため、2つ目のピナクルでピッチを切る。
3P目:A山リード(A1)
T塚リードのピッチの残りの部分(2つ目のピナクルから左上、扇岩まで)と、本来の3P目を登る。扇岩からはひたすらA1。ピンは多くあるが、残置スリングにアブミをかけなくてはならない箇所もあり、非常に緊張する。
4P目:A山リード(Ⅳ+、A1)
本来はT塚リードのピッチだが、2P目でモタついたのが響きペースアップのためにA山さんに登っていただく。ハング下の小さなバンドに上がって右にトラバース、高度感はすごいが、足元の雑草に気をつけて行けば問題ない。
5P目:A山リード(Ⅴ+)
リードを勧められるも「登るのに時間がかかると思ったら代わります」との言葉に甘える。岩はフェースだが、濡れていたので私は大苦戦。人工混じりで何とか登る。
6P目:T塚リード(Ⅳ)
今回予定の最終ピッチ。離陸出来ずにまたもやモタつき、最初の2手ほど人工。スラブ帯でピンは豊富にあるが、人工のあとのスラブは怖い。ポイントでA0する。
終了点はハーケン2本とリングボルト2本。さらに10mほど上部に懸垂支点らしきものが見えるが、草付を登る感じであまり良くなさそう。
ここから懸垂開始。
懸垂1P目:A山・T塚の60mロープを使い、4P目取り付きまで。
懸垂2P目:登り4P目から50mロープで、扇岩左下の大テラスまで。扇岩で懸垂ルートが大きく屈曲してロープが回収出来なくなるため、A山-Y田が扇岩に残り、ロープ回収後、大テラスへ。
懸垂3P目:大テラスの蒼稜ルートの懸垂点から60mロープでT4到着(50mロープでは足りない)。
T4でデポした荷物をピックアップして、すぐにT4尾根を懸垂下降(25mで1回、50mロープでロワーダウン2回+懸垂(ロワーダウンはブッシュ帯を通るのでロープの絡まりを防ぐため)、そしてT4尾根取り付きまで60mギリギリで到着)。
帰りは、岩小屋跡のところを渡渉(膝まで水に浸かる。冷たかった!)。横尾まで行き、ビールでカンパイ!お疲れさまでした!
今回の雲稜行きは、昨年10月の氷川屏風岩での岩トレ(ぶな祭の一環)の際、メールに「夏に屏風を目指そう!」という文言があり、以前から遠くから見て憧れていただけに、「本当に行けたらいいなぁ」と思ったところから始まりました(T巳さんとY田さんは違いますよね、ごめんなさい)。
本当にこんなに早く行けるようになった(連れてってもらった?)のは、今まで叱咤激励しながら練習に付き合ってくださった仲間のおかげです。
不十分なところがまだまだたくさんありますが、でも夢の屏風岩に行けて、本当に嬉しかったです。行動を共にした、A山さん・T巳さん・Y田さん、本当にありがとうございました。
【Y田記】
今シーズンの目標ルート。9月の連休あたりに総決算的に登ろうかと思っていましたが、A山さんのお誘いもあり今シーズン初・本チャンでしたが目標を達成できました。
今回のためにスキーシーズン終了後から人工登攀を集中的に練習し、アブミルートは「得意」と言えるようにもなりました。
今までトポにあった「A1」を見て登るのを諦めていたルートが、具体的な目標ルートと考えられるようになってきました。
本番では渡渉、藪漕ぎ、濡れた下部岩壁、荷揚げ、貸し切りのT4テラスで宴会、ごろ寝。そして登攀終了後の猛スピード懸垂。門限のあるトンネル。クライミングだけど登山してるなーと感じられる山行でした。初級者脱出にはオススメなルートかも。さぁ次はどこ登ろうかな~
【T己記】
行ってきました!屏風岩東壁雲稜ルート。
一年前には夢にも出てこなかった自分には縁のなかったこのクラシックルートに辿り着き、齧り付き攀じ登り、何とか登り切ることができました。
「今年の目標にしたい。T巳さんと行きたい」と誘ってくれた米ちゃんにまず感謝。そして、A山さんやT塚さん始め、これまで一緒に練習に付き合って頂いた多くの方々に感謝。入会以来こんなに人に感謝の気持ちを覚えたのは初めてだと思う。そして、5月の懸垂事故以来、これまで学んできた(つもりだった)ことと、(本当の)やらねばならないことを再構成しつつ、何とか頑張りぬいた自分にも少しほっとした。
屏風岩と言うと「人工」というイメージですが、実際はフリーの頑張りを試されるルートでした。美しいラインと言えば聞こえはいいですが、要はルーファイの能力を厳しく試されるルートであり、個人的感想ですが、ルートの楽しさは北バ四尾根をかなり上回ると思います。但し、展望と終了点に夢がないことは減点かな。
またT4でのビバーク。星空の下、そのままシュラフカバー(と防虫ネット)だけで過ごした周りに誰もいない夜も最高でした。宴会やって、どうも最後はまた記憶を失くしていたらしいですが。。。
登攀終了後のA山さんの鬼気迫る懸垂も印象深かったです。60mロープを本当にフルに生かし、急いで急いで何とか上高地脱出に成功。あと1時間遅ければ釜トンネルが閉まってしまう所でした。
さて。。これで初心者・初級者は脱出できたかな?と思うも、まだ人を指導する力はない。まごつくことも多い。人より時間が掛かることも多い。ロープも絡む。でも、出来ることが確実に増えてきた。「何でもっと若い時から取り組まなかったんだろう」というのは置いとくと、この歳でも新しいことに挑戦し続けることができるのを身を以って証明できているのは快感。とはいえ、ここまでのペースで引き続き山に入るのは、今の自分の立場では無理。今後は少しペースを落とさねばならないのが本当に残念と思いつつ、こうして目標を達成し、他にも行きたい所が増えてくると、ちょっとヤバいかも。人生の正念場は続く。。。
【A山記】
2週間前に東壁ルンゼくずれで2ピッチだけ登ったけれども、それより上に行くのは、およそ30年ぶり2回目というかつての高校野球強豪高のような雲稜。大学二年生のときの話など、もうとうに覚えていない。覚えているわけが無い。。
でも、何年たっても良いルートはよい。不変かつ普遍的な事実だ。それが屏風の雲稜です。
このルートは屏風岩東壁の初登ルート。さすがに弱点をうまく突いている。
先人達はこのルートをどうやって見つけたんだろう。登山道から双眼鏡で観察したのだろうか。
それにしても美しいルート取りだ。実質の人工は3ピッチ目だけ。
それ以外はフリークライミングの実力を試されるルートだ。
グレードは5級。デジマルで5.7!でも侮れない。ぎりぎりだ。
自分が12クライマーなら3ピッチ目(11cと言われています。)もフリーでいけたのだろう。しかし、あいにくそんな実力はもちあわせていなかった。
もっともっとフリーを練習してオールフリーでいきたい。。。そう思わせるルートが屏風東壁雲稜ルートです。みなさん是非一度どうぞ。アプローチも短いし、アルパインクライマーを標榜するなら是非押さえておきたいルートと思います。
懸垂の奥義もお教えしましょう!やっぱロープは60mですね!
コメント