メンバー:S藤H、S口、M上(会員外)
初日のアプローチ、沢靴+ワカンで進む。徒渉で脱いだり履いたりする手間を省くつもりが、飛び石できるくらいの浅瀬×二回で済んでしまいました。足が冷たい、というより痛い!
荒沢出合で山靴とアイゼンに履き替えて、天狗の鼻まで、標高差にして1250mの急登に喘ぎます。
雪がスボズボで苦しい。頑張ったのでしたが、屈強な若者お二人(G登攀クラブ)に追い付けず・・助かりました。
第一&第二クーロワールは、階段状、難なく登って、天狗の鼻に到着したのが16時過ぎくらい、息も絶え絶えでした。偵察は、他パーティーに期待しましょということで、パス、即、お酒&夕飯となりました。
翌朝は3時起床5時出発、周辺のパーティーは殆ど出撃済、私たちは遅い方でした。
さて、恐怖の北壁トラバースの始まりです。以前、主稜を登った時に、恐わ過ぎて二度と来ないと固く誓ったのに、またまた来てしてしまいました。
失敗×一回で1000mは落ちます。グサグサの雪が突然ズボったり、雪壁がカチカチ-パツパツだったりします。一歩・一歩が冷や汗もんです。雪崩跡も何度か通過します。正しく”ロシアンルーレット”です。
アイゼンを激しく蹴り込んで、ダブルアックスのダガーポジションで慎重に進みます。蹴り込み過ぎて足の親指が激痛!
辺りは息を飲む光景、厳めしい鹿島と五龍に挟まれた真っ白な「かくね里」は実に優美でした。
蝶型ルンゼは、下から眺めると、羽を広げた蝶々にように見えるらしいのですが、基部をトラバースしたため、氷瀑の付け根ジャストに到着。近いせいか蝶々にもリボンにも見えませぬ。
<1ピッチ> 60m WI4+-5R(S口)
氷のリボンは、ベルグラ・雪氷・草付き・岩壁といった感じ?威圧感はないけど、部分部分立ってる。気持ち悪いからS口くんリード!
確保支点は無い、というか、リードが落ちたら全員で飛ぶスタンディングアックスだから落ちて貰っては困るのだが・・S口くんのモノポイントが、雪氷を切って一瞬ビックリ!・・でも、大丈夫でした。
<2ピッチ> 60m WI4-4+R (H明)
相変わらずスカスカ・ウスウスで、部分的に垂直、背後の高度感が素晴らし過ぎて、ついつい(効いてないのに)スクリューを余計に入れてしまう。
スクリューは少し入れると直ぐにガリガリくんになる。あぁ~レーザースピードライトがぁ~。
<3ピッチ> 60m 雪壁を直上 蝶型左稜か?(M上)
<4ピッチ> 60m 雪壁を右トラバース、蝶型右稜か?(S口)
<5ピッチ> 60m 雪壁を直上から左へ、 ピークリッジ基部を巻いたか?(H明)
<6ピッチ> 60m 天丈ルンゼ右俣?を左方向へトラバース。(S口)
<7ピッチ> 60m 天丈ルンゼ左俣?の右端の這松帯を直上。(H明)
<8ピッチ> 60m 雪壁を直上、抜けると向こうが断崖なので左へ。(S口)
<9ピッチ>100m ノーザイル
この先、支点になる岳樺や這松がないのでザイルを解く。リッジを左に進むと傾斜が緩んで100mくらいの雪壁登りで荒沢の頭の手前に出る。
鹿島槍の北峰が目前、素晴らしい景色。記念撮影をして、早速下山にかかる。痩せた尾根を少し進むと直ぐに30mと60mの懸垂の連続になる。
急峻なナイフリッジをバックステップで下降、急雪壁の横トラバース、アプローチ同様、失敗×一回で飛んで行ってしまう。
17時頃、ベースのテントに戻る。うーん遅いなぁ・・。
そうこうしているうちに、吹雪になる。酷く疲れているが、テントを降ろす作戦にする。
真っ暗な中、第二クーロワールをクライムダウン、続く、第一は、S口くんはさっさとクライムダウン、私とM上さんはお疲れモードなので懸垂。
吹雪の中、テン場を探しながら下降を続ける。21時頃、いい具合の平坦地が見つかったので掘削してテントを張る。
ガタガタ&ヘロヘロだったメンバーも暖かいテントに入ったら元気回復。翌朝1時まで飲んでしまいました。
最終日、朝寝坊して9時ころ歩き出す。GPSで下降尾根を間違わないように慎重に進んで、荒沢出合いへ。
デポした沢靴とわかんを回収して大谷原までトボトボ。そして、13時ころ、駐車場に帰還、お疲れ様~!!生きてて良かったー!!
大町温泉の「薬師の湯」で全身を解凍、山行中、夢にまで見た「タカラ食堂」は残念なことに臨時休業、楽しみにしていた「大町山岳博物館」は休館、ということで、ノンアルコールビールとラーメン餃子で打ち上げて帰途に就きました。
【S口さんコメント】
一昨年4月に天狗の鼻までは登ったことがある天狗尾根。
今回はそこをベースに鹿島槍北壁を目指す。
1日目。
沢靴&ワカンで大谷原をスタート。アラ沢出合で冬靴&アイゼンに履き替え尾根末端に取り付く。
名古屋のパーティーと先頭を交替しながらラッセル。
急登から緩やかな樹林帯、リッジを進むと、第一クーロアールを越え2,120m地点。
第二クーロアールのある最後の急登を頑張ると天狗の鼻。
夕闇が近づく鹿島槍北壁を眺める。カッコいい。
雪を掘って整地しテント設営。ああ、疲れた。
2日目。
暗いうちに北壁基部に灯りが見える。名古屋Pらしい。5時過ぎに出発。
天狗の鼻から一つピークを越えた最低鞍部からカクネ里上部の雪壁トラバース。
延々と一時間半、ダガーポジションで横移動。滑落したらカクネ里の底まで落ちて逝きそう。
名古屋Pが取り付いていた氷に到着。これが氷のリボンF1のようだ。
両袖の岩壁は近過ぎるせいか蝶型に見えない。
1P目、F1 S口リード。
右端から取り付く。氷は柔らかくてスクリューがあんまり効いてくれてなさそう。
薄くて、長いスクリューだと先端が岩をなめる。氷は30mほど。さらに30m伸ばしてピッチを切る。
F1上は二俣。左にF2が架かっている。右の雪面が蝶型ルンゼ?
真ん中の枝稜が蝶型左稜?F2先が天井ルンゼ?
2P目、F2はH明さんリード。
ここも氷が柔らかめ。落ち口下に短いバーティカル。
これも60mめいっぱい伸ばした。
あとはリードを交替しながら雪面やブッシュ帯を進む。
3~4P目で高さを稼ぎ、5~6P目で大きく左にトラバース。カクネ里と同じくらいの斜度。
荒沢の頭が眺められる。すでに天狗尾根を下降しているパーティーの姿が。速い。
7~8P目で荒沢の頭に続く緩い斜面へ。ここでロープを解く。
数百メートル歩いて荒沢の頭。雲が多くなってきた。
2か所の岩場で懸垂下降。天狗の鼻に帰着した頃には暗くなり、吹雪いてきた。他のパーティーの姿はすでにない。
我々もここに残っては大変と判断しヘッ電下山開始。
ヘッ電の灯りを頼りに第二・第一クーロアールをバックステップで下降。
22時頃、1,950m付近でテントを張ることにする。
ガスの火が凍えた身体に嬉しい。数えきれないほど蹴り込んだせいで親指の爪が痛い。
深夜1時頃に就寝。
3日目。
新雪が15㎝ほど積もっていた。のんびりと9時に出発。
風も雪もそれほどではない。ゆるやかな樹林帯に入るとスノーハイク気分。
分岐する枝尾根に注意。トレースも残っており歩いてアラ沢出合に帰着。
デポした沢靴を回収して大谷原へ。大町温泉で疲れ切った身体を癒す。
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