剱の頂上直下で滑落して200mほど流されましたが、幸い怪我もなく止まり部分的に歩いたものの、予定通り池ノ谷右俣をスキーで下ることが出来ました。
今年は雨の影響で池ノ谷ゴルジュの側壁の雪は全部落ちて、安全に通過できます。
【メンバー】
N島F博(L)、K玉T彦
【詳細報告】
4/17(土)
16:00 室堂
18:00 剣御前
18:30 長次郎末端でツェルト設営
桜も散ったというのに、季節外れの雪で自宅周辺でも白く積もっている。大月の辺りは真っ白で冬に戻ったような景色。
特急車内でK岡さんパーティ4人とも合流。甲府の先で線路内に倒木があり、撤去作業のため11時予定が、2時間以上遅れての信濃大町着。改札で特急券の返金あり。駅前のバスに素早く乗り換えて扇沢へ。14時発のトロリーバスで黒部ダム。
続くケーブルはすぐに乗れたものの、ロープウェイ駅で50分待ち。
外の展望台で山を眺め、白えびのかき揚げそばを食って過ごす。
16時少し前に室堂着。板を肩に担いだまま、大穴を掘っているU竹さんのところへ寄って4.5mのピットチェックを観察。いくつか明確な氷の層があり、室堂でも雨だったことが分かる。ここ数日の新雪は40cm程。室堂山荘の脇から雷鳥沢の末端まで滑降。周囲はシュプールだらけ。シールを準備して16:50頃から剣御前へ向けて登行開始。奥大日岳をバックに滑るテレマーカーの写真を撮る。
雷鳥沢の上部でトレースがなくなり少しラッセル。
18時に稜線に立ち、夕焼けの剱と再会。剱沢の滑降を開始するが、こちらの斜面は湿雪のサンクラストで滑りにくい。徐々に暗くなり始め、雪面が見えにくい状態で平蔵谷の末端まで向かう。途中にテントが2張り、うち1つはボーダーのよう。窪地に覚えがありここが平蔵谷の合流点と思って止まるが、K岡さんの「これは武蔵谷ではないか?」の声に「そうかな?」と思ってもう1つ下まで滑る。
実はそれが長次郎の出合であることが翌朝、登り始めて分かる。夜はそれほど冷えずに済んだ。
4/18(日)
5:15 行動開始
8:20 長次郎コル
9:35 剱ピーク
10:10 右俣滑降開始
10:20 滑落
12:00 池ノ谷二俣
12:30 白萩川
13:10 馬場島
3:40頃に起床、朝食後少し水を作って1リットルずつ持つ。互いの無事と本日中の下山を祈って、K岡さんパーティと分かれ、我々は長次郎雪渓をひたすら登る。雪質はほどほどに固く、ラッセルはない。昨年のGWに2回登ったルートではあるが、今回は誰もいない静かな長次郎。八ツ峰が右手に迫ってくる。正面には北壁の滑降ルートが見えてくる。ノドの通過時にやっかいだった岩は埋まっていて見えない。稜線には雪煙が舞っていて強風を覚悟する。
トップを交代しながら、8時前に斜面途中でアイゼンに切り替えるために休憩。K岡さんとの無線交信では池の平小屋に到着し、これから小黒部谷への滑降開始とのこと。こちらのピーク予定を9時と設定し、1時間後に再度無線交信とするが、結局こちらが余裕なく、その後の交信は無理だった。
コルから反対側の池ノ谷左俣を確認し、何とか滑れそうと判断。相談して一応当初の予定の右俣を確認するため、剱ピークを目指すことに。
上部の岩場にトラロープのフィックスが見える正面の雪壁をアックス1本で登りだす。雪が固く、次第に斜度も増し、数回の蹴り込みが必要で意外と悪い。先にロープにたどり着いたN島がザックから6mmロープを出してK玉くんに投げおろす。トラロープまで登ってセルフを取ってもらい、確保の状態でK玉くんのアックスを受け取り、ダブルアックスで残り1mの雪壁を超えると、剱ピークまで続く雪稜に乗ることが出来た。
アックス2本をロープ伝いに渡してK玉くんを肩がらみで上げる。
途中、右側のエントリーポイントを探りながら9:35、剱ピークに立つ。強風のため、素早く記念撮影ののち、早月尾根方面の斜面を観察するが、上部はあまりに急斜面で早月尾根を100mほど下る必要ありと判断。30mほど三ノ窓方面に戻って、先程登行時に確認したエントリーポイントから入ることにする。そこから更に吹き上げる強風の中、30m程の固い斜面のクライムダウンがあり、ようやく新雪の乗った場所でスキーを履くことが出来た(10:10)。
アイスバーンの上に風で飛ばされた新雪が乗る不安定な斜面ではあるものの、出来るだけ新雪の厚い部分を選んで滑降開始。50m程高度を下げたところで、新雪が薄くて微妙な横滑りがあり、エッジが利かずN島が滑落して200m程流されて止まる。滑落途中、右の板が外れてケブラーの細引きで作ったリーシューも切れたが、幸いにして体の30m下方で止まってくれた。右ふくらはぎの打撲程度で特に怪我はなし。「大丈夫だー!」とK玉くんに叫ぶ。とにかく体も板も止まってくれてよかった(10:25)。
板を回収し、更に下降を試みるが、雪の状態が悪く、見える範囲で斜度も急になり巻き込んでいるためアイゼンに変えて左へトラバース。
乗越すと広い斜面に出たが、相変わらず雪が固いので急斜面を歩いて下り続け、大滝と思しき場所を右の略奪点に向かってみる。略奪点から右下方を見ると滑れそうな斜面が広がっており、正解と判断。ここでスキーに履き替えて滑降再開。一部、アイス部分がありそこを微妙な横滑りでこなすと、雪のたっぷり乗った斜面に入るとこれで何とか帰れると一安心。振り返ると滑降斜面の右側に大滝が確認できた(11:40)。
右に剣尾根の岩壁を確認しながら、締り雪の急斜面を二人でカッ飛ばす。次第に雪が重くなり疲れ出す。池ノ谷二俣に到着する頃は既にヘロヘロ。滑らなくなった雪を惰性でこなして、タカノスワリノゴルジュへ入る。
10年以上前のGWに数回、徒歩で通過した際の記憶とは全く異なり、見上げても落ちてきそうな雪のブロックもなく、足元は新雪で真っ白。
今年はどうやら雨の影響で側壁の雪が全て落ちており、更にここ数日の積雪で表面が覆われている。スキーを脱ぐことなく難なく通過でき、白萩川に合流(12:25)。
小窓尾根の取り付き目印となる雷岩をK玉くんに説明し、更に下降。一部割れた雪渓を巻いて、水取入口を左岸から抜けて林道に出る。
後は平坦な河原をこなして馬場島に到着(13:10)。運が悪ければ事故ではあったが、懐かしの池ノ谷で思い出に残る会心のスキーだった。
同行してくれたK玉くんに感謝して握手。
しかし、ここからが更に長かった!痛い右足を少し引きずりながら、最初は雪を滑ってつなげたものの、効率があまりに悪いので諦めてビーサンに履き替えて板もブーツも担いで、伊折のゲート目指してテクテク歩く。最後にヒッチハイクで乗せてくれた馬場島荘の方から鯖寿司をいただいた!伊折出身のタクシー運転手の方からいろいろな地元の話を聞きながら上市まで。荷物と板・ブーツを駅まで運んでくれた。温泉に入って、越後湯沢経由で東京へ。
馬場島荘のご親切にあらためてお礼申し上げます。
自宅に戻ったのは23時を過ぎていた。
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