[メンバー] M藤L、N野
錫杖周辺の氷化具合をチェックしているとある写真が目に留まった 。黒い岸壁を貫く大氷瀑。「カネコロン」だ。 周辺の気温、降雪状 況をチェックしN野さんへ連絡。急遽、糸魚川へ向う。 糸魚川市内で前泊&宴会。「核心のピラーは俺がやりますよ」。酒の勢いで余計なことを言ってしまう。。
2/24(土)
スキー場に到着。背後には岸壁を貫く大氷瀑が聳える。林道の除雪 終了点に向かうとスキーを履いたパーティーが 下山して来たところ 。聞けばカネコロンに取り付くも下部氷壁が崩壊、グランドフォー ルし敗退したとのこと。 昨日は一日中陽が当たっていたようで大分 緩んでいるようだ。
林道から樹林帯に入ると予報通り雨が降り出す。ワカンを履いた足 元を湿雪に取られ歩き辛い。雨足は次第に強く なる。標高を上げる に従いミゾレへ。想像より遠い。ガスの切れ間から崩壊箇所であろう黒い岩肌が薄っすら見え た。ガスで上部の地形が分からず、雪崩を避けられそうな岩下のシュル ンドの縁にテントを張る。 テントに潜り込むも装備がビショ濡れで悲惨な状況だ。それでも、 N野さんのザックの中からビール500mm✕4、 日本酒5合瓶、 おでん、フランクフルト、ワンタン、カレーにナンが出ると、一転 、大盛り上がり。 軽量化などどこ吹く風の歩荷ぶり。流石は「練馬の馬車馬」である 。
2/25(日)
3時起床の予定が何時も通り酔い潰れて4時30分起き。雨予報に 反し、空には星が輝く。背後には暗闇を貫く白い影。 無風だが空気が温い。ラッセルで取付きへ向う。崩落箇所は想像より大きい。左半分が削 げ落ち水が滴る。 残った右側にも水平方向へ亀裂が走っている。雪 氷が水を吸って大分緩んでいるようだ。普通ならやめるコンディ ションだが、再びチャンスがあるとは限らない。暫し逡巡するも意を決する。無言でロープを捌くN野さん。 想いは同じようだ。ロープは片方のみをクリップして、ビレイ点で解除。フォローは他方のロープで確保し、氷崩 壊によるビレイ点の破壊を防ぐシステム とした。
1ピッチ 50m(N野)
8時登攀開始。右端からスカ雪氷を直上。いつ崩壊するか分からない状況にビレイヤーも緊張だ。見上げる氷瀑は幾重にもツララが垂れハングしているように感じる。中間部を左よりに進み上部クラゲ氷からピラー左で切る。
2ピッチ 5m(M藤)
巨大ツララからのシャワーが酷く、トラバースし右側のテラスへ。
3ピッチ 43m(M藤)
カネコロン名物の核心ピラー。テラスからはツララハングに頭を抑えられ上部は伺えない。高度感満点の左トラバースからピラー正面へ。垂直の世界が遥かに広がる。アイスクライミングの真髄を味わえる素晴らしいピッチだ。傾斜がやや落ちたところから左上しテラスを目指す。 スクリュー1本足りず、テラス手前でハンギングビレー。
4ピッチ 7m(N野)
陽を浴びた支点が怪しく、さっさとテラスへ。回収時に22cmスクリューが回すことなく引き抜けた。。
5ピッチ 35m(N野)
右側へ回り込み凹角を直上。カンテ状を右へ乗っ越す。賞味期限切 れの氷特有の太鼓音がやけに大きく響き続け、肝を冷やす。バイル を撃ち込むと岩が剥き出す。 最後は雪壁ルンゼを駆け登り、満面の笑みの長野さんのもとへ。ガ ッチリと握手。13時30分。 理想的なコンディションとは言い難い大氷瀑を、全ピッチリード&フォローともノーテンションの理想とするス タイルで幕を閉じるこ とが出来た。
(コメント) アイスクライミングを始めたころ、ヒロケンさんの旧版アイスクライミング本に載っていた衝撃的な写真を眺め 「ここは無いな」と思った。 あれから、何千、いや何万回バイルを振りアイゼンを蹴り込んだろうか。「志あるところに道は開ける」ものですね。
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