メンバー YT川(L)、K
ブルーファング
名前がいい。日本語に直すと<青い牙>。数年前、仙人沢に行った
折り、垂直部が大氷柱の2倍以上あるこの氷瀑のことを知った。
昨年は火山注意報が出て、ブルーファングに近づけなかった。
今シーズンは米子不動の後はブルーファングに行くつもりでいた。
今週日曜日天気が良さそうでチャンスが来た。
先週の週末は蔵王の天気が良くなく、回避した。H明氏も二口に回避している。
金曜日、こちらを出たのが11時半と言うこともあり、蔵王の青根温泉の
駐車場に着いたのが3時を回っていた。土曜日は駒草平まで
しか考えてなかったので、ノンビリ起きた。9時に青根温泉310
円の共同温泉に入る。少し濁った良い湯の温泉だ。これからクライ
ミングに山に入る野暮が無ければ、どんなに気楽かと思う。ここの
駐車場にはヒーターの付いたトイレが完備され、まことに快適な車
中泊だった。エコーラインからそれ程離れてない。
温泉の後、澄川スキー場に向かう。雪が少なく、道路に雪がない。
澄川スキー場は若者がいっぱい。そこへ、大きなザックを背負って
いるおじさんの存在は、場違い。とは分かっていても、
リフトに乗りたいから仕方ない。ザックが大きすぎて、リフトの椅
子に移動しながら乗るのは至難のわざだった。3番目のリフトで椅
子に座れず、こけてしまう醜態を晒してしまった。動いている椅子
に20キロ程の荷物を載せて、自分もその隣に座るのは、難度が高い。
ヤレヤレ。
リフトを3つ乗ってから、駒草平方面に向かって、雪原を歩く。少
し歩くと、エコーラインの道が見えてくる。道路に出るも、濁川に
下る場所の検討が付かない。風が強い。あたりは高原状で地吹雪を
遮るものがなく寒い。すると、上から単独の青年が降りてくる。
聞くと、展望台がこの上にあり、駒草平もそちらにあるらしい。
兎に角、駒草平に向けて行くことにした。ちょっと歩くと、展望台
と休眠中の売店を見つける。建物の陰にテントが張れそうだ。
ベランダらしきところに、テントを設営する。
展望台から不帰の滝は見えるものの、その右岸のブルーファングは
崖に隠れて見えない。不帰の滝は瀑流が流れ、
大きな口を開けている。
日曜日24日、荷物をデポして、下降路に向かう。下降出来そうな
斜面を探す。しばらく下ると、崖が終わり下れそうな斜面が出てき
た。よく見ると、トレース跡がある。雪は硬くて潜らない。濁川沿
に40分程登ると、ブルーファングが見えてきた。
ブルーファングの取り付きに着いて、氷瀑を観察する。良く見る写
真のブルーファングの下部の形状が違う。真ん中の氷柱を登る記録
があったが、今年はその氷柱がない。左の氷柱が巨大に発達してい
る。20mほど登ったところで折れ、手前に傾いている。
傾斜の強い正面も登れるが、左の側面が傾斜がなく簡単に登れそう。
ラッキー。本来は20m程のバーティカル部Ⅵ級がⅣ+
で登れて行けそうだ。
1p目 50m バーティカルを避け、左の側面にKさんが取り付く。
傾いた氷柱の天辺に登り、その上は左上気味に傾斜の強い氷壁を登る。
Ⅴくらい。
50m程でアバラコフの残置のあるポイントに着く。
2p目 50m ビレ支点の右側の垂壁を行くようだ。垂直部が長く
続いているので、気が重い。所々、アックスを打ち込んだ跡がある。
大体、20mくらい登ると、先が見えてくるものだけど、
このピッチの垂壁はひたすら垂直が続く。流石に、あまりスクリューの
間隔を開けるのは怖い。腕が悲鳴を上げる。
レストするとまだアックスをしっかり振れる。テンションするのは
まだ必要ないみたい。40m程登って、やっと、先が見えビレー支点の
目途を付ける。このピッチⅤ+からⅥ-くらいかな?
3p目 10m程階段状を登って落ち口上に出た。
落ち口から雪の斜面を50mほど登ると、展望台の台地に到着。荷
物をデポした売店が目の前にあった。下山はエコーラインを下った。
今回は、1p目の核心ラインが自然のいたずらで易しいラインが横
に出来ていた。横に易しいラインがある以上、あえて難しいラインを
行く必要はない。
プレゼントだと思う。晴天の中、我々だけと言うのも、幸運だった。
本来のブルーファングはたぶんもっと難しいのではないかと思う。
今年は<牙>が抜けていたのかもしれない。
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