【メンバー】Lたもしま(M山/えびちゃん/えびさん)(記)、 クマッシー(K代)、K坂
【行程】
6:16 福養橋から入渓
7:20~7:35 福養の滝の下で登攀準備
9:30 福養の滝下段の登攀終了
13:00 福養の滝上段の登攀終了
13:45~15:13 上の大滝の登攀
15:55 遡行打ち切り
16:30 福養の滝遊歩道入り口 着
【計画の経緯】
福養の滝を初めて訪れたのは、2016年5月のことだった。その時も沢登りはやっていたが、このような登攀記録のない大滝を登ろうなどとは思いもしなかった頃で、滝屋として観光して(遊歩道を外れて滝壺までは行っているが)終わり、それほど印象には残っていなかった。それでも、静岡県の大滝の1つとして記憶には残っており、今回の登攀につながった。
福養の滝でググると、2010年の静岡勤労者山岳会の記録が出てくる。
http://shizuoka-rozan.sakura.ne.jp/archives/597
https://sawamonkey.amebaownd.com/posts/565391/
この滝の登攀を目標として下見している山行のようだが(結局、登攀していない?)、この記録で登れそうと判断されていることも、今回の計画の参考になった。
7/22からの4連休、当初は川内の沢を計画していたが、どうも天気が優れない予報ということで大峰に転進、しようかと思って計画を出したものの、直前になって南アでも良さそうということになり、結局、栗代川遡行~関の沢川宇洞沢下降とした。当初、この25日はこの山行の予備日だったが、24日の昼過ぎには下山できたことから、25日はあまり歩かずに済む軽そうな沢を登ろうということで、この福養の滝を選んだ。
【遡行】
福養の滝の下にも登れる滝があるということだったので、遊歩道入り口にクマッシー車をデポし、たもしま車で福養橋へ。
いきなり堰堤があってちょっとやる気を削がれるが、この堰堤の銘板のおかげで、どうやらこの沢の名前は「樽ノ沢」らしいと分かった。マイナーな沢の場合、沢名を調べるので苦労することもあるのでこれはありがたい。
[いきなりの堰堤]
[堰堤の銘板]
この堰堤を右から容易に巻くと、小滝が連続し始め、しかもその全てが直登できる。意外にもラバーソールがバチ利きで、非常に快適。今回はフリーソロ登攀とお助け紐の組み合わせで全ての滝を登ったが、パーティの力量次第ではメインロープを使った方が良い滝もあった。残置物は見当たらず。
[8m滝]
[10m滝]
[3段7m滝をフォローするクマッシー]
1時間ほどで、福養の滝の下に着いた。下段(23m)はそれほど難しくなさそうだったが、クマッシーがリードしたそうだったので譲る。左は下の方が階段状で容易だが、上部はハングしているので厳しく、そのままトラバースもロープの屈曲が酷くなりそうなのでいったんピッチを切る。
次のピッチは、クマッシーがトラバースだけして終了。何だかリードに精彩を欠いていたのでリード権を奪い取って、3p目からたもしまがリード。落口の右の草付きを掴んで登攀。ここで上段の全貌が見え、左右のどちらを登るかによってピッチを切る場所も変わるので、右往左往して検討し、結局左を登ることに決め、左でピッチを切った。
1段目の落ち口には、約10年前に静岡労山Pが打ったと思われる残置ボルトが2本あった。
[下段の登攀ライン]
さて、この上段(42m)が福養の滝のメインであることは言うまでもない。最上部以外は巻き気味に登ることになる右壁に比べ、左壁は上部が激シャワーとなりそうであるものの、水流に近い綺麗なラインで登れそうだったことから、左を選んだ。
1p目、ルーファイが良くなかったようで下部で詰まったが、何とか立て直して中間部の快適なスラブを登り、ちょっと厄介なトラバースをしたところで、良いクラックもあるし、この先のロープの屈曲とシャワーと登攀の難しそうさを考慮し、ピッチを切る。フォローは比較的スムーズに登攀。
2p目、まずは水流左をシャワーを浴びながら登っていくが、結構難しいしぬめっているのでこれでもかというほどたわしで磨きながら登攀。結構時間がかかった。プロテクションはまずまず取れる。下から見ても核心だろうと思っていた激シャワーになりそうな場所のすぐ下に着いて、よく見てみるも、かなり厳しそうで、これは水線を離れて巻き気味に登るしかないだろうかと思い始めて右を見ると、水流を横断して、右へ向かうバンドが見えた。そういえば、下から見たとき、上部は右壁の方が登りやすそうだと思ったことを思い出し、これを横断してみることに決める。強い水流を浴びるが耐えてトラバースすると、都合のいいことに水流の反対側までバンドは続いていた。ここでハーケンをバチ効きに決めて安心し、悪いスラブを磨きに磨きながら慎重に登り、旧流路と思われる岩窪に乗り上がった。この2p目は、会心の登攀だった。
ここでこの上段も終わるのかと思いきや、見るとまだ5mくらい続いており、しかもそれほど簡単そうではない。迷った末、ロープの重さや濡れずにビレイできること、ちょうどいいクラックと残置ハーケン(古い軟鉄製)があることを考慮し、ここでピッチを切った。残置があることから、どうやら初登ではないようだ。フォローはゴボウを交えたり水流を激しく浴びたりして何とか登攀。
[上段の1-2p目の登攀ライン]
[2p目をリードするたもしま]
[2p目をフォローするクマッシー]
[2p目終了点:残置ハーケンとオフセットエイリアンで]
3p目、短いがホールドの甘いスラブで、これも結構面白い。ここには中間支点となる古い残置ハーケンが2本あった。
[3p目の登攀ライン]
これで一連の福養の滝は終わりと考えてよさそうだが、滝上にはまた小滝があった。水流右から登れそうだったが微妙に難しく、シャワーを浴びて水流左から登ったが、これも結構面白い滝だった。
[福養の滝の直上の小滝と福養の滝を登り終えて小休止のK坂]
等高線の本数等から、これで終わりではないだろうと思ってはいたが、果たして、もう1つ大滝(25m)があった。遠目には水がひょんぐっていて登れそうになかったが、近づいて見ればジグザグに登れそう。しかしたもしまは福養の滝で精神力をかなり消耗したし、クマッシーがリードしたそうなので、ここはクマッシーがリード。1p目はⅢ程度の快適なシャワークライミングで、2p目は歩いての水流裏の横断(Ⅱ-)、3p目は脆い岩の左上から水流右のぬめるスラブの登攀(Ⅳ)と、難易度は高くないものの、変化に富んだラインで面白い滝であった。滝上には5mCS滝があったが、倒れ掛かっている流木のおかげで容易だった。
[上の大滝をリードするクマッシーと登攀ライン:破線は歩き]
これで終わっても充実の山行だが、まだ見せ場があった。流木の倒れ掛かる滝の先で沢は少し平凡になるが、それでも遡行を続けるとゴルジュ状になり、またまた登れる小滝が続いて楽しい。中には荷物を背負ったままでは厳しいようなのもあり、意外にも登り応えがある。
[上部ゴルジュの滝群(1.5m,4m,6mCS):全て登れる]
最後の6mCS滝を登るといよいよ沢は平凡になったようなので、ここで遡行終了とする。左岸斜面を適当に登りトラバースしていったところ、茫洋とした植林地でヒルに怯えたり、新設林道に蹂躙された登山道で迷いそうになったりしたが、結局は福養の滝の遊歩道に出た。せっかくなので遊歩道の観瀑台からの福養の滝も見てみたが、夏の茂った葉に隠れ、残念ながらよく見えなかった。それでも、この滝を登った自分は、誰よりもよくこの滝を知ったような気がした。
[観瀑台からの福養の滝]
結局、駐車場に戻ったのは16時半。10時間山行になってしまった。もともと、半日程度で終わる軽い山行のつもりで行動食も少ししか持っていかなかったのだが、とんでもなかった。我々の行動や登攀が遅かった面もあるが、それでも福養の滝を登ると半日で終わるような沢ではない。
残置の存在から、昔に登られているとは思われるが、記録の見当たらない大滝を登攀したのは初めての経験であり、登れたラインも我ながら綺麗なラインであって、大変満足した山行になった。2泊3日の沢の翌日にもかかわらず付き合ってくれたメンバーにも感謝したい。
【主な使用ギア】
50mハーフロープ2本:今回の登ったラインでは30mでOKだった。
トーテムカム、リンクカム1式:それなりに使った。
オフセットエイリアン3本:今回初めて使ったが結構使いやすかった。
ハーケン:アングルハーケンは使わなかった。
ゴーグル:水流を渡る際には必須。
ラバーソールの沢靴:クマッシーはクライミングシューズを使っていたが沢靴でも十分。
ステンレスたわし:使いすぎて最後には紐が切れて紛失してしまった。
【総評】
この沢は、福養の滝までなら初心者でも楽しめ(1級上)、福養の滝を巻いて上の大滝を登れば中級者も楽しめ(2級)、福養の滝を登れば上級者も楽しめる(4級上)。しかも単調なゴーロはないし、アプローチは近いし、滝は全て登れるし、水も綺麗で、ぬめりも少なく、ヒルが結構いることを除けば頗る快適な沢である。特に福養の滝は、ぎりぎりフリーで登れる丁度いい難度、水流を2度も横断する大滝登攀の醍醐味に溢れる滝であって、素晴らしい。もっとメジャーになり、この沢の面白さを多くの人に味わってもらえればと思う。
【ヤマレコ記録】(GPSログ、遡行図あり)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3391852.html
【紛失物】
本山行中(恐らく福養の滝登攀時)に、リンクカム#0.5(紫)を紛失したようです。もし拾得された方がいらっしゃいましたら、ご一報いただけると幸いです。
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