【メンバー】Lたもしま、MSO、Y本(記)
【天気】3日間とも晴れ
【タイムスタンプ】
7/29 6:30早出川ダム→9:30早出川→10:30中杉川出合→15:40C1(450m付近左岸)
7/30 5:40C1→8:40乗越→14:00広倉沢左俣出合→16:00早出川→16:30C2(360m付近左岸)
7/31 5:00C2→12:00バックウォーター→14:00登山道→15:05早出川ダム
【ルート概略】(国土地理院地図を加工して作成)
【報告】
お盆の奥利根沢合宿に向けた訓練山行の仕上げとして、早出川の周回ルートへ。長すぎる泳ぎ、アブ、雪渓といった試練もあったが、山深いエリアで合宿本番並みに充実した沢旅を楽しめた。
<1日目>
有休でつなげた三連休の本命は南アルプスの赤石沢北沢で、バスと赤石小屋の予約まで進んでいたが、天気が持ちそうな早出川へ転進。転進先とはいえスケールの大きなルートで期待が高まる。
最初のダム湖岸道の歩きで結構な量のヒルが集まり、いきなり心が折れる。駒の神から松次郎ゼンマイ径に入ると、径路上にキボシアシナガバチの巣があり、たもしま先輩が数か所刺されて直進を断念。遡行に支障はないとのことで、湖岸から早めに沢に下降することにする。トラバースや草付き泥斜面が悪く、プチ滑落もあったので、お助け紐を出しつつ、早出川の爽やかな河原に降り立った。
バックウォーターはしばらく河原歩きだったが、想定外の淵が出てきていきなり100m近く泳がされる。流れは弱いが、シンプルに長くてしんどい。径路歩きよりも若干時間を食って中杉川出合へ。中杉川も大きな支流だが、本流は比較にならない水量だ。
中杉川に入ってしばらくすると子落としの悪場で、5mハング滝から続く連瀑帯だ。巻いている記録が多いが、たもしま先輩が空荷で苦労しつつ登ってしまう。下部のトラバースが難しく(ボルダー4級?)、後続はお助け紐2本でビレイ+フィックスロープにアブミをかけて、ハングをゴボウで這い上がった。情けない登り方だが、アッセンダーをビレイに変えただけで格段に登りやすくなり、難しい滝に有効なオペレーションだと思う。続く滝は登れないので、左岸からトラバースをかけて3本まとめて巻き、懸垂1回で沢に戻った。
ちょくちょく泳ぎが入ってきつつ、ゴルジュ帯で立派な側壁が出てくる。上部ゴルジュに入ると景観はさらに立派になり、確かに綺麗なんだけれども、2018年の山抜けの影響で埋まったせいか変化には乏しく、期待が高かっただけに少し物足りない。野球場のような山抜け現場を抜けて少し進み、450m付近の河原で幕営。魚影は薄く、竿を出したが全員ボウズに終わった。
<2日目>
出発してすぐにユウ沢に入ると滝場が出てきて、大体どれも快適に登れる。詰めに入ると傾斜が増し、たもしま先輩が草付き泥斜面の抜けそうなニラを掴みながら直上して、後続はお助け紐ゴボウで這い上がった。中杉川で一番際どい箇所だった。ほぼヤブコギなしで鞍部に詰め上がると、目の前に矢筈岳、銀太郎山を始めとする山深い川内山塊が現れた。
下降する広倉沢右俣右沢はほとんど記録がなく、本山行の核心なので気合を入れる。地形図のとおりにしばらくは下降しやすいが、等高線が詰まってくると連瀑帯が出てくる。開放的な景色とゴルジュが組み合わさって気持ちいいエリアだった。懸垂下降5回(うち捨て縄3回)を要したものの、結構大きな滝でもぎりぎりクライムダウンできる難易度のものが多く、高度感も相まって面白かった。事前の見立て通りに雪渓はなかった(右俣本流には大きな雪渓が確認できた)。
右俣本流と合流すると水量が増え、泳ぎ下る釜も出てくる。左俣との二俣の直前、登り返せない釜の中でクライムダウンできない滝(魚止滝)にぶち当たった時は焦ったが、右岸リッジから灌木をつないで懸垂下降で無事沢に復帰できた(長さは50mロープ1本でギリギリ)。
広倉沢の二俣以降は泳ぎ下るだけだろうと思っていたが、410m付近のゴルジュに崩壊中の雪渓が登場。3回も潜らされてヒヤヒヤした。雪渓の下で雪渓にバイルを刺して這い上がったり、潜っている最中に5分前に潜った雪渓の崩壊音を聞くのはもう勘弁。ヒロクラ淵の4m滝は飛び込んで下降し、幕営予定地の早出川合流点へ。快適な幕営地が見つからないので、早出川を適当な場所まで下降することにする。いきなりの大釜淵を流されて突破し、川幅一杯に引っ掛かっている流木を苦労して乗り越え、30分ほどで容ヶ谷出合前の河原(増水には耐えない)に到着して行動を打ち切った。焚火をしても消えないアブに苦しめられた。
<3日目>
アブ対策で早々に出発。数えきれない淵や瀞をひたすら泳いで下る。10m以上の泳ぎだけで数十箇所あった気がする。去年、葛川下降で衝撃的なほど泳いだ経験があり、早出川の泳ぎは想像の範疇ではあったが、初めての人は驚くと思う。地形図ではゴルジュマークだらけだが、幕営適地がちらほらあり、遡行の場合も途中で幕営できそうだ。MSOはこの日のために持参した浮き輪でぷかぷか流されていた。スピードは泳ぎといい勝負で、楽かと思いきや意外と腕と腹筋を使う模様。
スケールの大きな渓相と立派なゴルジュが続くが、滝は一つもなくて変化が乏しいのと、アブが2日で激増しているのとで、(贅沢な限りだが)飽きてきて下山後の温泉のことしか考えられなくなる。かなり長いので遡行はしんどいと思う。中杉川出合付近のドゾウ淵と、広倉沢出合付近の大釜淵は流れが強く、遡行時の核心になると感じた。
帰りは蜂の巣がある径路を避けて、進める限りバックウォーターを進む。堆砂で形成された渓相はここでしか見られない圧巻の景観で、沢旅の終わりを感じさせる。金ヶ谷出合から脆いリッジに乗ってダム湖岸の斜面に取り付き、トラバースに1Pロープを出して登山道へ。最後の最後にまあまあ悪い詰めを強いられた。30℃以上の湖岸道歩きに耐えて下山。道が多少乾いてもヒルは3匹付いていた。魚沼市内まで戻ったところの焼肉店で打ち上げて帰路へ。
【感想】
<たもしま>
中杉川と早出川は、長くて変化が乏しく、大味な沢という印象。どちらも定評のある所だが、期待しすぎるとがっかりするかもしれない。一方の広倉沢右俣右沢は情報がなかったが、意外にも立派な滝場があり、期待以上だった。こちらを遡行して中杉川を下るというのも悪くなさそうである。
全体としては、3日間かけて川内山塊の代表的な沢を周遊することができ、好天にも恵まれて充実した山行であった。が、虻による不快さが楽しさを上回った気もする。
☆ヤマレコ記録☆
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4541664.html
<MSO>
初日からなかなか調子が上がらず、はっきり言って山行中は楽しさよりしんどさが勝ってしまいましたが、下山して写真を見返すうちに少しずつ良い山行だったなという実感が沸いてきました。ただ早出川の湖岸道はもう二度と歩きたくないです。早出川本流遡行に挑戦することは恐らく無いでしょう…
<Y本>
昨年の今早出沢~ガンガラシバナ~割岩沢に続いて早出川流域の代表的な沢へ。寒くなるほど泳ぎまくって夏にぴったりの山行になり、赤石沢に行くチャンスを逃した無念も吹っ飛びました。やはり2泊3日の沢に入ると遠征感があって充実します。
中杉川のゴルジュ、早出川の泳ぎはもちろん印象的ですが、良くも悪くも想像の範疇を出ないものでした。一方で、広倉沢右俣はほとんど記録がない沢に突っ込む冒険感があり、特に連瀑のクライムダウンはギリギリ下降できる難易度で楽しめました。また、ダムのバックウォーターはまさに大渓谷で、ほとんど人が入らないエリアを歩けて面白かったです。
際どい箇所もいくつかありましたが、全てリーダーがお助け紐を垂らしてくれたので、危険を感じる箇所は少なかったです。ヒヤッとしたのは、雪渓の下を通過している最中に、直前の雪渓が崩壊する音が聞こえた場面でした。真夏の標高400mそこらで雪渓に肝を冷やしたくないものです。
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