北ア・有明山 中房川深沢右俣 2022/10/8-9

沢登り

【期間】 2022/10/8~10/9
【メンバー】 Y田(L)、S津、N島、Y本(記)
【天気】
1日目:霧雨(夜は曇り)
2日目:曇りのち雨
【タイムスタンプ】
10/8 7:20観音峠→8:00深沢入渓→9:40F3上→11:30二俣→15:00F6上→16:30C1
10/9 7:00C1→7:40F8下→9:40F10下→12:40F10上→15:20稜線→17:40有明荘

【報告】
 本当は黒部別山の別山谷左俣R3に行きたかった。しかし、天気予報が最悪で計画書を出すことすら叶わなかった。本命に行けずモチベーションが微妙な中、越後の水無川流域の日帰り沢など色々な転進案が出たが、何とか二日間天気が持ちそうな深沢右俣に決定。登山大系に上級者向けとあるとおり、痺れる滝登攀が続いて充実した。

<1日目> 
 道の駅松川で前泊していたら伊藤新道Pと鉢合わせ。睡眠時間を削って宴会になる。
 観音峠に駐車していざ出発。沢床まで50m以上あり、最上部の強傾斜は懸垂で降りた。中房川は増水しており、深沢出合へ最短ルートの渡渉は無理。少し上流の浅瀬からスクラム渡渉し(二人バランスを崩して濡れた)、ヘツリで入渓。深沢出合は貧相な渓相だ。

 F1とF2はどれだか分からないまま通過。登れる小滝が多くて楽しいが、滝の水流で濡れて寒い。F3のハング滝はY田さんが右壁に取り付いてみるが、雨で壁の状態が悪いので撤退。そのままロープを引いて左岸の枝沢から巻いた。F3の落ち口にF4が続いていて、F3から続けて楽に巻いた。登れる滝らしいのでもったいないが、今回は滝の直登にこだわりまくるメンバーはいない。

 ここから小滝群は結構ヌメった。F5(と思われる小滝)でヌメリに足を滑らせて滑落。メンタルにダメージを負った。巨岩帯を経て二俣に着くと霧雨でひどくなり、立派な奥壁もあまり見えない。二俣を右俣に入るとすぐ3段50mのF6。雨と寒さでモチベーションが上がらず、帰るならこのポイントと撤退まで視野に入るが、撤退するほどの天気でもないのでF6に突っ込む。

F6 1P目 Ⅳ 20m Y田
 1段目は逆くの字の右壁凹角からスタート。最初はフリーソロで、テラスからロープを出す。最初のワイド気味のクラックにカムを決めて抜けるワンポイントだけ難しく、1段目の落ち口まで一気に登る。乾いていたら快適だろうが、濡れていて慎重になった。

F6 2P目 Ⅳ 30m Y本
 後悔しかないピッチ。2段目も3段目も快適に直登できると知っていたが、雨で最上段が滑りそうなのと、F5の滑落で弱気になり、左岸のブッシュ帯に直上する巻きラインに逃げてしまった。寒くて手もかじかんでいたし。カム#2を決めて岩場からバーチカルなブッシュ帯に入り、モンキーでテラスまで上がってピッチを切った。
 2P目の終了点から枝沢で高度を上げて小尾根のバンドに復帰。この巻きで針金と苔むした残置ピッケル(!)を発見。冬も人が入っているのだろうか。ピッケルは苔に取り込まれていたので大分年季入りと思われる。珍しいものを見れて逃げのライン取りが報われた、と思うことにした。

F6 3P目 Ⅲ+ 15m N島
 バンドを進むとノーロープでは厳しい箇所があり、念のためロープを出した。雨で集中力を欠いていて正直あまり記憶がない。
F6 4P目 Ⅲ+ 20m Y田
 斜め懸垂10mで落ち口につながるバンドに降り立ち、ロープを出してトラバースで落ち口へ。懸垂も含めルーファイ核心のピッチ。

 F6で初日の核心は終了。1680m屈曲点の幕営適地を目指す。正面壁付近の岩小舎は傾いていて泊まれないのでボツ。1600mくらいからGPSが沢床から離れた場所を示すようになり、ルートミス疑惑が浮上。本流と間違える水量の枝沢はないはずなのになぜだ…。ガスで視界が悪くて判断できないので、現在地を同定できる場所まで引き返すことにする。30分ほど引き返すとGPSが沢床を示して解決。結局は地形図が間違っていたようだ。
 快適な幕場はないので、岩小舎の少し下、4人寝られる大岩にタープ+両入口ツェルトで幕とした。全身濡れているし冷え込んできてかなり寒い。濡れた薪をかき集め、着火剤フル投入で焚き火に成功。この日で唯一暖かかった。

<2日目>
 焚き火で乾かした服にダウンを着込んで寝たので足先以外は寒くなかった。濡れた装備が凍っていなかったので、冷え込みは5℃くらいか。寒くて焚き火で暖を取っていたら支度に時間がかかってしまった。
 朝はガスもなく、視界があればルートミスしようがない。テン場すぐに昨日全く見えなかった正面壁が現れる。なぜ昨日見えなかったのか不思議なくらいのスケールだ。屈曲点の幕営適地は今回の幕場と大差ない印象。小滝をいくつか超えるとF10の連瀑に至る。前衛にF8(10m)とF9(10m)がかかり、奥にどう見ても核心なF10(20m)が見える。

F8 Ⅳ 20m N島
 水流をフリーソロで直上してみたがロープなしでは厳しいので断念。ロープを出して右側壁のバンドから登る。傾斜が強くなる箇所でカムを決めてしまえば快適に直上できる。リードはまあまあランナウトする。

F9 Ⅳ+ 20m Y本
 結果的に二番目に難しかったピッチ。水流も登れそうだが、節理でプロテクションが取れそうな右側壁のバンドから登ることにした。一段上がると想像以上に傾斜が強いスラブで、手も足もあるのかこれ…。土で埋まったリスをほじくり出し、ハーケンを叩き込んで何とかスラブに足を上げた。数m上がるとスラブの真ん中に土まみれのクラックが登場し、ここもプロテクションなしではとても登れない。無理だったらリード交代するよー、メンタル核心だから頑張れーと後ろから煽られる。F6で巻きラインに逃げた悔いがあり、ここは何としてもリードで抜けたかった。土で埋まったリスにマイクロカムをねじ込み、カムを信じて足を引きずり上げて行く。スラブから水流側壁のスタンスに乗り移る箇所もバランシーで怖い。落ち口まで直上し、ヌメるクライムダウンで沢床へ。解放されて安堵の吐息が出た(メンタルが摩耗して以降リード不能に…)。フォローもメンタル核心は嘘でマジで悪かったと言っていて救われた。
 どう考えても水流直登の方が簡単だったが、落ち口の要所に残置ハーケン(下の写真に写っている支点)があったので右側壁のラインも登られているようだ。

F10 Ⅴ 45m Y田
 落ち口がハングしていて直登は無理、側壁が立ちまくっていて高巻きも無理なので、右のジェードルから登るしかない。通常ロープを出している下部30mはギリギリフリーソロで抜けて、ジェードル下のテラスでロープを出した。出だしのカンテがホールド乏しくいきなり核心。ここでリードは空荷になりクライミングシューズに履き替える。細かいスタンスに乗って右の凹角からカンテを突破し、しばらく快適に直上。小さいナッツを決めて被り気味のジェードルの頭を抜けると灌木で支点が取れる。灌木から笹藪をトラバースしてF10落ち口で終了。まさにジャパニーズアルパインのピッチだ。

 フォロー(沢靴)は総力戦となった。中間2名はショルダー、プルージックの簡易アブミ、荷上げを駆使してカンテを突破。空荷であれば凹角をツッパリで進める。ジェードルの抜け口はロープの流れが悪くなったため、ハーケンを打って右のリッジにA0トラバースして抜けた。
 ラストが登る前に2本目のロープを垂らして、また総力戦でリードとラストの荷物を荷上げ。岩に引っかかることなく終了点まで上げられた。ラストもだいぶ苦労して無事全員集合。F10の突破に3時間かかった。残念ながらセカンドが打ったハーケンは回収できず。

 F10を抜けると快適な小滝だけと思いきや、倒木付きのCSが厄介だった。お助け紐でビレイしてY田さんが突破。左足で倒木の折れそうな幹に荷重するし、ホールドも遠いので結構怖い。この辺りから雨が降ってきた。F10登攀中に降っていたらと思うとゾッとする。落石だらけの沢筋を詰めて、ヤブコギ15分ほどで登山道へ。
 有明山の山頂で有明荘にタクシーを呼び、タクシーで観音峠の車を回収した。安曇野しゃくなげの湯で冷え切った身体を温め、心地よい疲労を感じながら帰路についた。

【装備】
・50mハーフロープ2本 登攀では1本のみ使用。荷上げに2本目使用。
・ハーケン各種 随所で使用
・カム#2以下 随所で#2まで使用
・アブミ 使用せず(F10を荷物ありでリードするなら必要かも)
・クライミングシューズ F10のリードのみ使用。絶対必要。
(※)ロープを出す滝登攀が続くので、2人か3人がベストと思われる。4人だと時間がかかって下山が日没後になってしまった。

【感想】
<Y田>
 まぁなんというか、転進で行くレベルの沢ではなかった。4人も多すぎる。そしてこんな天気と分かってたら絶対入渓しなかったな、とか。それでもまあ今シーズンの総決算になるに相応しい沢だった。登攀系大好きなS子さんお勧め沢だけのことはあった。初日に天気とコンディションで言い訳ができて、登れる滝をたくさん巻いたので内容的にはやや悔いは残るものの、一番見栄えがして美味しいピッチを一番マシなコンディションの時に納得いく形で登れたので、終わりよければすべて良し!な感じで清々しい気分です。ご一緒してくれた皆さんありがとうございました。

<S津>
 天気予報によると、もう少し良い予報だったはずなんだけどなあ!遡行の早い段階から終始霧雨が…。 戻るには、増水気味の深沢を渡らないといけない、それは嫌。行くしかない。 
 晴れていればもう少し快適だったかもですが、皆様のおかげで、焚き火もでき、無事遡行できてよかったです。

<N島>
 この天気予報の、この週末が、こんなに充実するとは思わなかった。行って良かった。
 Lはじめ、メンバーの皆様に心から感謝です。いろいろな意味で自分の既成枠を打ち破ることができた山行でした。折からの増水、降雨、低温の三拍子、寒くて寒くて、でもとても楽しかったのは、もちろん沢の良さもありますが、ご同行いただいた皆様の温かさによるところが大きい。ヤマは、仲間次第ですね。
 GPSに騙されかけた、初日のルートミス疑惑にはびっくりしたけれど(だって、どう見たって間違ってないじゃんよ。ねえ。。。)、結果、良いテンバに恵まれ、霧雨のなか、あれだけ濡れていた薪に火をつけることができて嬉しかった。Y田さんの圧倒的な強さや、優れたLとしての在り方を目の当たりにし、自分の未熟さをつくづく思い知ったけれども、それはそれで、まだまだ精進が足らんな、頑張ろうと、思いを新たにすることができたし、下山ではハナイグチも収穫できた。なんだかんだ言って結局、ヘッデンにならずに下山できた。そして、何より、仲間に恵まれて、楽しかった。
 ありがとうございました。来年は別山谷に行きましょう。沢屋3日会わざれば刮目して見よ。そのときには必ずや、もっと、強くなっていますので。

<Y本>
 深沢右俣は自分の実力を超えていて、核心F10を登れないと詰みかねない沢でした。ずっと雨で壁は濡れているわ、めちゃくちゃ寒いわと余計に苦しみましたが、困難だらけだったからこそ充実しました。雨で焚き火は内心諦めていましたが、焚き火が付かず濡れた服で寝ていたと思うとゾッとします。
 F6は心の弱さが出て登れる滝を巻くラインに逃げてしまったし、F10のリードは無理でした。そして何よりF9は最弱点のルートではなかったし、時間がかかり過ぎたので適切な行動ではなかったです。しかし、プロテクションを取りつつ、抜けれるか分からないラインに突っ込むヒリヒリ感は何とも言えず、このリードを経験して成長することができました。前の週にスラブ合宿に行っていてよかった。
 来年こそは黒部別山谷に行きましょう!

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

アーカイブ
TOP
CLOSE