西穂山荘~西穂~奥穂~涸沢岳西尾根下降 2008/12/28-31

積雪期登山

■メンバー(症状)
LS山W : 顔面凍傷(軽度)
I藤K太 : 足先凍傷?(水泡あり)
S津A子 : 無傷(どうして?)
Y田S : 顔面凍傷(軽度)

~当初の計画では、27日からの計画で、西穂~奥穂~槍でしたが、出発前の予報が悪かったために直前に計画変更。出発を1日遅らし、ルートは西穂~奥穂~涸沢岳西尾根下降に短縮。食料、燃料などを軽量化して、とりあえずダメ元で行ってみました。~

■12/26 出発前夜:S山W(記)
年末年始の予報は冬型気圧配置がバッチリ決まる様相のため、とりあえず出発は延期。作戦会議のため新宿西口に集合する。ぶな祭りにゲスト参加した韓国人の女性のお店に行ってみるが満員で入れず。それからあらゆる居酒屋にアタックするが、年末のためどこも満員。1時間ほどさ迷ってから、やっとこさっとこ歌舞伎町の「かあさんの宿」という、しけた居酒屋に入店できた。話し合いの結果はルートを短縮して、ダメ元で行くだけ行くことにする。

■12/27
夕方、松本に集合。タクシーで平湯へ。バス停で幕営。水は近くに涌いているし風雪も遮れて快適(トイレは閉められてしまいます)。

■12/28 風雪
ロープウエイ駅15:00~西穂山荘16:30
始発バスで新穂高へ。始発ロープウエイ(8:45)に乗るはずだったが強風のため第二ロープウエイが運休していた。
仕方がないのでロビーでダラダラ過ごす。うーん、今年も敗退か?と思っていたら14時頃やっと動き出した。
ロープウエイ駅からその上は、ラッセルを心配したがばっちりトレースがあって安心した(ワカンは不要だった・・)。

西穂山荘まで快調に歩く。山荘下の樹林帯を整地して幕営。夕飯を食いながら明日の作戦会議。この時点では明日以降の予報が悪かったので空身でいける所まで行って往復か?という案が有力だった。


■12/29 晴れ:Y田S(記)
出発6:45~西穂9:40~天狗のコル18:30
朝四時起床、テントの外は満天の星空。メシ食いながら天気予報をチェックすると、昨日よりいい感じ?だったらとりあえず行っちゃう?てな感じで予定変更、荷物を全て持って出発することに。6:45出発、朝日が見える。
いい天気や。稜線をさくさく登り、一時間ほどで西穂独標へ。楽勝。風もほとんどなく、ハイキング気分。

8:30頃、ピラミッドピーク。しかしやたらとヘリがバンバン飛んでいる。物見遊山というよりは明らかに遭難救助モードな飛び方。後で聞けば前日に滑落した人やら、稜線で凍傷になって救助を求めた若者やら、いろいろたくさんいたらしい(若者グループのカタワレは西穂山頂までの稜線ですれ違ったっけな)

9:40、西穂山頂着。相変わらず楽勝モード。ここまでは歩きで来れたが、ここの山頂から懸垂下降。その後も回数は忘れたが要所要所で懸垂が入る。しかし相変わらず天気はいいので、ジャンダルムや奥穂高岳らしき山がすぐ近くに見える。「今日中に奥穂着いたらどうする~?」なんて会話が飛び交う。(どっかで見たようなシーンだ…)

昼頃、やや厳し目の登りで初めてロープを出す。I藤さんリード。下から見てると簡単そうなのだが、実際に登ってみると、岩は脆いし逆層についているのでけっこう難しい。
15時ごろ、けっこう悪いトラバースをしている途中、Y田墜落。一抱えもある岩が剥がれた。リードのI藤さんが張ってくれたスリングにセルフビレイを取っていたため、1m程度の墜落で済む。やっぱバックアップは大事やなぁ…と改めて再認識。岩の強度確認もね。怪我はかすり傷・打撲程度。ヘリは呼ばなくても大丈夫そう。

そんな苦労をして登ったピークは…ジャンダルムじゃなくて天狗岳だった。一同がっくり。かなり甘めな地図読みをしていたみたいだ。そのあとは沈み行く夕日との戦い。夕焼けがきれいやったから明日はいい天気なのかな・・・、などと思いに耽る暇もなく、どんどん暗くなっていくが、まだテン場になるような場所に行き着かない。

真っ暗な中、ヘッデンを出して懸垂下降を2本連続、で降りたところに広々としたテン場好適地があり、この日の行動終了。ちょうど尾根の東側のためか、ほとんど風もない。みんなで雪を踏み固め、テントに入ったのは19時過ぎだったか…

食事を終えた頃にはもう22時近く、山なのにえらく遅い。この日は初めてのこと(荷物あり懸垂下降、荷物あり墜落、ヘッデン懸垂下降)がたくさんあってやたらと疲れた。というわけで珍しく酒もあまり飲まずにとっとと就寝…



■12/30 風雪(最高気温-12℃ 最低気温-19℃ / 稜線では平均25m/sを超える風):I藤K太(記)
天狗ノ頭先のコル(2830m 6:30)~ジャンダルム(3163m)~奥穂高岳(3190m 14:30)~穂高岳山荘(2983m 16:00)

○天狗ノ頭先のコル~
設営時に無かった風が夜半からテントを掠める。稜線の風が強いことは容易に想像できた。やはり稜上はよろめく程の風。あまりの風にY田君は岩陰でゴーグルを出す。この後、彼以外はメガネやまつ毛が凍り付く事となる。
私のサングラスには吐いた息が一瞬で凍り付き、徐々に薄い氷の膜ができる。視界と凍傷を天秤にかけ、しばし目出帽を口まで下ろすことにした。

幾つもの峰を越す。その度にこれはジャンダルムだろう、そんな期待が胸をかすめる。ジャンダルムには道標が無いため、磁石であたりをつける。ジャンダムまではロープを出すことはなかったが、とにかく長く感じた。なんの感慨も無い、唯の峰の一つだった。
ふと、鼻が白くなっていることを指摘される。もう防風を優先させなければならない。サングラスをしまい、凍りついた目出帽を鼻まで上げる。Wさんは黒ずんだ鼻に氷が付いている・・・それもちょっと所じゃない。

○ジャンダルム~
この頃から風雪(寒さ)に目を閉じて耐えると、まつ毛が凍り目が開けにくくなる。ツララが邪魔でしょうがない。
ジャンダルムから肩1段を経て、東峰へ懸垂。東峰は更に険しく、ルンゼを40m懸垂。送り出したロープを落とす時、とにかく引っかかった。その為か、回収できずに25m程で切断することになる。鎖場を経て、いよいよ奥穂高へのコルへ。この風裏は唯一の休憩のできる場所であった。風が無いだけで、とても暖かく感じる。凍りついたまつ毛や手を回復させる。(ジャンダルム付近で4-5人テント幕営は不可)

さぁ、奥穂高岳への最後の登りだ。コルから正面の急な峰を経て、馬の背(細い2~3の峰)を辿る。特に最後の峰が険しい。悩むWさんの前にしゃしゃり出て、稜へ上がり峰直下の左壁からトラバースを試みる。行けないことは無い、奥穂高へのコルは直ぐ先だ。だが、真横のトラバースで落ちては確保されていても危険度が高い。Wさんが示したコルへ続く下方の雪面を目指す事にする。Y田君は稜線を行こうと、主張する。私は強風下に細い稜上を歩くことはためらわれたし、何より、あまりの寒さのため話し合う時間さえもどかしかった。

懸垂を行い、件の雪面へ。コルへ続く雪面は思ったより細かった。懸垂が終わった者から最後の上りへ。風雪の中のため、ロープをしまうのが億劫だ。先行が恨めしくなり、雑になるロープワーク。ふと、横を見るとまだY田君が隣でロープを畳んでいる。「手を抜いても次に使うときに苦労するだけだ」思いなおしてキチンとしまうことにする。

頂上はすぐだった。あまりに長く感じた。皆は標を持ち風に向かい記念撮影をし始めた。勘弁して・・・一人風に背を向け、何度か誘われた写真を断った。代わりに力強く一人ずつ握手を交わした。

○奥穂高岳~
小屋へ続く尾根までは道標がしっかりと案内してくれる。しかし山頂から幾つもの尾根が伸びているため、Wさんが先導してくれているにもかかわらず、念のため磁石で確認をした。下降開始。この尾根は幾筋かの岩稜をもつ。そのために各岩稜で幾度も方向を確認した。この状況下では少しの誤りさえも心を挫くのは容易いと思われた。

Wさんに導かれ岩稜間を下降すると、落石防止?ネットが張ってあった。小屋は近い。鎖も見つかり、後は、慎重に下降するだけだ。うっすらと屋根らしきものが見えた時、やっと人心地ついた。Wさんのルート取りに感謝。(視界とルート取りによっては小屋を外して下降してしまう可能性もあるかもしれない)

○穂高岳山荘
最後に小屋に着く。Wさんが、いきなりコーヒーカップを差し出す。??。この天気で先行パーティがいるのか?
結局この日は「北穂高」のクライマ2パーティ、「涸沢岳西尾根」のカメラマンパーティ、そして我々の計4パーティもが山荘に。たった数口だったが、差し入れられたコーヒーは本当に旨かった。


■12/31曇りのち晴れのち曇り:S津A子(記)
奥穂冬季小屋10:30~涸沢岳山頂10:55~涸沢岳西尾根(H2400)13:20~新穂高16:00

前日、ここで停滞かもしれないと思ったが一応6時に起きようと相談して就寝。たが、目覚ましが鳴っても誰も起きようとせず・・・周りのPも起きる気配全く無し!
お腹が空いたので7時過ぎになって起きだす。I藤君が、外を見に行ったら「視界は、昨日と同じ位」とのことなので、朝食を食べてから再度外を見て判断しょうとゆっくり朝食を取る。

W君が外を見に行ったら「晴れている」!!!急いで支度して出発する。朝一番の登りは疲れる。すぐそこに涸沢岳頂上が見えるのにすごーく遠くに感じこのまま頂上に着けないかもっ、と思ってしまうほどだ。
太陽が出て青空だが、風が強く止まると、とたんに手足の先が冷たくなる。気温は体感ー15度以下だと感じる!

次回の為、涸沢岳から北穂へ向けての下りを確認し 景色を見るのもそこそこに涸沢岳西尾根を下降開始。途中上の方がガスってきたが、その前に降りてこられてホッと。小屋に同宿していたPが赤旗を立ててくれていたので迷う事なく無事下山。途中からトレースもばっちりついていたし。さすが人気ルートです。

せっかくなので平湯でゆっくり温泉に入り、快適なバス停で打ち上げをし、年越しそばを食べ、新年を祝って就寝。
(奥穂の冬季小屋は、煮炊きをすると天井からポツポツと雨が降ってきてテントを張らないと辛いです!混んでいるときは大変そう!)

■メンバーコメント
・S山W
昨年の正月、同ルートをS山、I藤、A久、S津で計画しました。しかし、自分はインフルエンザにより無念の登山口敗退。A久さんにLを代わってもらい、S山抜きで行ってもらったけど、自分がウイルスをばら撒いたのか、西穂を越えた辺りでI藤君も発症?。撤退となりました。今回はそのリベンジを果たせて大いに満足です。強力メンバーの皆様、多謝。

・S津A子
このルートはぶなに入る前から無雪期、積雪期と合わせて6度目の挑戦。今回も、冬型が強く厳しいので行けるとは思っていませんでしたが、WPのもとで、奥穂まで歩けた事とても嬉しく思います。凍傷を負ってしまった人がいたのは、とても残念ですが。(たぶん皆、暫くの間手足先の感覚は普段と違うと思うけど)

・I藤K太
一番厳しい山行だった。課題が全て現実となった。その代償は大きい。これまで課題だったのは厳しい環境での行動が少ないからだろう。年末年始の天候は厳しいものだった。それでも、驚くべき記録がまた幾つも発表されることだろう。厳しい環境下での行動を控えるというのは本質ではない。先に行くためには厳しい環境で試行錯誤するしかないのだろう。体と心が持てば、、、、

・Y田S
経験不足は否めないのでせめて足は引っ張らないようにしようとがんばりました。ほとんどついていっただけでしたが、岩登り、ルーファイ、装備の軽量化等々…非常に勉強になりました。自分の力でも困難な山行をこなせるようになりたいですが…要修行です。

 

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