黒部横断スキー 屏風尾根~赤沢岳~鳴沢~ハシゴ谷乗越~剱沢~小黒部谷~折尾谷~ブナクラ谷 3/20-23

山スキー

【メンバー】H部(L)、会員外4名
【行程】
3/20 6:50日向山ゲート-8:15扇沢-11:40屏風尾根2206コル-15:00主稜線-16:00赤沢岳-17:30幕営地
3/21 7:00BP-8:00黒部川-9:00内蔵助谷出合-13:00ハシゴ谷乗越-13:30近藤岩
3/22 6:20BP-8:00池の平小屋/8:30滑走開始-12:00小黒部谷出合-13:00幕営地
3/23 5:30幕営地-8:30ブナクラ乗越-9:20馬場島/10:20発-12:15伊折集落
【記】
■はじめに
20年ほど前、三浦・亀岡ペアの黒部横断の記録を見たのが山スキーを始めたきっかけだった。純白の裏剱に向かって歩みを進める姿が衝撃的で、いつか自分も…との思いで就職してすぐにぶなへ入会した。
以来何度か黒部を横断したが、小黒部谷はなかなか縁がなく、気づけば10年越しの課題となっていた。といっても、少し調べれば分かる通り技術的に問題となるところは少ない。雪と天気は当然の話として、主に人間側の都合(=サンデースキーヤーなので休みが取れるか)が問題だった。まあ、積年の課題なんて得てしてそんなモノかなあ、と思う。
結果的には連日の好天と豊富な雪に助けられ、極めて順調に行程を進められた。豊富な積雪でパウダーは楽しめるが、深い山に入れなかった今シーズン。ようやく全身で山を味わえる山行となった。


■3/20 晴れ
夜行バスで6時前に大町に到着し、日向山ゲートで富山に車をデポした仲間と落ち合う。相変わらず扇沢までの歩きは長い。
直前に降った雪が余計で、大沢小屋手前から稜線までみっちりとラッセルを味わうことに。幸い、結合が良いので詰められるところは沢を詰めて時間を節約した。
屏風尾根はなんとかシールで上がれたが、硬い時はさっさと担いでしまったほうが楽だと思う。主稜線直下に幕営適地あり。


稜線に着いた時点で15時前だったので悩んだが、翌日からの強風予報を考えると今日のうちに標高を落としたい。遅い時間に沢に入るリスクと明日の強風リスクを天秤にかけ、一気に山頂を越えて鳴沢へ入ることとする。地図を見る限り弱点を探せば整地してテントは張れるだろう。


赤沢岳ピークは16時。すぐにでも板を履きたいが万全を期し、安全に滑る見込が立つまでアイゼンで標高差50mほど下降。夕日に照らされる剱を見ながら鳴沢に飛び込むと、そこには最高の雪が溜まっていた。辛いラッセルに耐えた末の滑走は忘れられない思い出だ。

地形図で当たりを付けていた小さな地形を整地してテントを張る。未明から風が強くなり始めた。

■3/21 晴れ、強風
昨日の疲れが残っていたのでゆっくり起きて7時に出発。地形図上の大滝は少し出ていたがスキーヤーズライト側から横滑りで処理できた。レフト側の小尾根を乗り越したガリーからも下れると思うが斜度が強い。
絶壁とキノコ雪に囲まれた黒部川は奇観だが、どこから雪崩が来てもおかしくないので長居したくはない。水を汲んで早々に内蔵助谷を詰めていく。


左手は丸山東壁・右手に大タテガビン。後ろを振り返ると赤沢岳西尾根の針峰群と凄い風景だ。思わず見とれてしまうが、日差しを浴びたマルトーから雪崩が来る前に急いで内蔵助谷を駆け上がる。雲の流れは早く、稜線には凄い雪煙が出ている。やはり、昨日の内に標高を落としたのは正解だった。


内蔵助平からはさほど労を要さずにハシゴ谷乗越に詰め上がり、剱沢に滑り込む。

時間には余裕があるが、標高を上げても風が強いので近藤岩の近くで行動を打ち切ることにした。半ドンでだいぶ体を休めることができた。15時頃、シーハイルのH米さん達が到着。話を聞いたが流石のライン取りだった。



■3/22 晴れ、強風
早めに出たシーハイルパーティーのトレースを使わせてもらって小窓雪渓を詰め、途中から平の池へ進路を変える。純白の裏剱を背負いながらのハイクアップは最高に気持ち良い。


池ノ平小屋(埋まってるけど)から眺める小黒部谷はスベスベ。10年前にS見さん・D介さんと来た時は1000m付近で敗退して大窓から帰った思い出が蘇る。さて、今年はどうなるか。


気合を入れて飛び込んだ小黒部谷は、真北を向いているものの沢がデカくて斜度緩めということで風と日射の影響を受けて良く言えばテクニカルな雪、悪く言えば酷い雪が用意されていた笑 出だしの2ピッチぐらいはギリギリ気持ちよかったが、あとは試練の下りである…。豊富な降雪で渡渉や高巻きがほぼ不要だったのは助かった。(出合付近のスノーブリッジで念のためロープを出した)


折尾谷の出合は地図を見ないと気づかないほどにショボい流れ。時間はまだ昼なのでその気になれば下山できそうだが、今はもう少し山を味わいたい。少し詰めた右岸にテントを張り、昼過ぎから酒とツマミを開放して最後の夜を過ごした。


■3/23 晴れ
下界では夏日という予報なので日が当たる前に折尾谷を詰めていく。折尾谷は斜度も屈曲もないキレイな1枚バーンになっており、ブナクラ乗越はずっと見えている。見えているのに一向に近づかないような錯覚に陥るが、体が山に慣れたのか最後まで気持ちよくハイクできた。


今山行のフィナーレを飾るブナクラ谷はシュカブラ、モナカ、ストップと春の山雪オールスターズだった。標高を下げると鼻水、くしゃみが出始め、里が近いことを実感する。


馬場島で警備隊からコーヒーを頂き、少し歓談してから下山を開始。やはり雪が多いのか伊折ゲートのすぐ前までスキーが使えた。最後に30分ほどシートラで歩き、デポした車に到着。下界は初夏のような陽気だった。


※3泊4日だと余裕を持った計画。今回は季節外れのパウダーで時間を食ったが、足と条件が揃えば2泊3日で行けると思う。ただ、成否は雪次第なのでバッファとして予備日は1日持っていた方が良い。猫又や毛勝まで継続すれば更に充実した山行になると思う。

関連記事

特集記事

アーカイブ
TOP
CLOSE