2011.7.16(土)-18(祝)
南アルプス 細沢圏谷~北岳
T山T雄、S田T、S藤A子、A口M恵、S藤H明
◆S藤H明
鷲住山を下る。昔、冬の北岳のアプローチに使った・・厳しかったなー。
そして、荒川出合いである。夢のブライダルベールである。
冬にアイスのベースにテントを張った河原を過ぎてグングン進むと、こりゃー絶対に冬は凍るに違いないという滝を見つける。50mはある。
林道が終わると広河原になる。熊の平を経て、お目当て細沢に入る。
ちょっと進んだところで、少し早いが、この先よいテン場もなさそうだしと言い訳して、大滝越えはシンドそうなので、業務終了。大焚火と貰い物の岩魚を刺身にしたり焼いたりして堪能する。
明日は、細沢圏谷を経て北岳山荘まで、まだまだ標高差は1500mもある。やだやだ。
◆S田T
バラエティーに富んだ山行でした。炎天下のアプローチ、高巻、よいテン場、いわな、焚き火、ガレガレ、一面のお花畑、生ビール、稜線漫歩、山ガール、渋滞、下山後のベトナム料理と盛りだくさんでした。
さて、後のT山さんの話しと似ているけれど、私は岳人ではなく昔のヤマケイで、細沢の記録を読んだ記憶がある。
ただし、その記録は、間違えて細沢の隣を遡行し、お花畑を逃してしまったというものだった。
そのころの私は、塾の先生をしていた。
山登りはハイキング程度で、たまに山小屋に泊まるぐらい。
南アルプスや沢登りなどとは全く無縁で、細沢を詰めてお花畑などをめざすなんて、一生ないだろうなと思っていた。
その細沢に、思いもかけず行くことになった。うれしかった。
言い忘れたが、そのヤマケイを読んだのは、今から30年も前のことである。
夜は、森の中のテン場でトマトと白ワインを煮込み、それにパスタをあえて食った。
料理の天才である。(食事当番:S田)
二日目、登り始めて30分で40m2段大滝。
右から巻き、河原に戻る。細沢は木で覆われているところが多いが、ここから開ける。
小滝をどんどん詰め、途中の15m滝をザイルを使って右から巻く。
そこからは、傾斜が強い河原がえんえんと続く。
しかし、この「えんえん」がハンパではない。今日の泊り場は北岳山荘だから、そこまでの高度差は1500mある。
高度2200mで水がなくなる。ここから傾斜がさらに増す。汗が吹き出し、ペースが落ちる。
周りには花が見え始めるが、見る余裕がない。高度2450mで再び水が出てくる。
ここで浴びるように水を飲み、フランスパンとハムとトマトとチーズを食う。
ここから先は、ガラガラの詰めとなる。あと高度差700m。
いやになるほどのガレ登りと、急傾斜の草付トラバースを終えると、左手にカールが見えた。
見渡せば、一面がお花畑。桃源郷とは、こんなところだろうか。
さらにガレガレを詰めて、稜線に出る。南アの人気コースだけに、ぐっと人が増える。
山ガールもいる。中白根山を越えて北岳山荘へ。生ビールを大ジョッキで飲む。悦楽のひととき。
ヤマケイで細沢の記録を読んでからしばらくして、私は沢登りを始めた。
それから25年間で登った沢は400本くらいになる。
沢登りを始めて15年ほどは、沢が楽しくてしようがなかった。
晩秋までしつこく濡れる沢に通い、冬には丹沢の小沢を登った。
ベルグラの滝にハーケンをうち、沢の高巻きはラッセルで越えた。
稜線に出て雪道を沢靴で下っていると、冬靴にアイゼンをつけた登山者からあきれられた。
3月になると、誰よりも早く沢登りを始めた。
そして25年間で、細沢を思い出したことは一度もなかった。
北岳山荘のテン場で、沈む夕日を見た。ここ北岳に来たのは、今回が初めてだ。
山頂近くで沈む夕日を楽しんでいると、昔、一人でハイキングしてたころを思い出した。
あれか ら3回、転職し、もうすぐ定年を迎える。
やり残したこと、やらなければならないことが、まだたくさんある。やり残した山や沢が、たくさんある。
過ぎていく時間を、いとおしく感じる。
ところで、後で、調べみたら、奈良田から広河原までバスが出てました。
これを利用していたら、初日の鷲ノ住山から林道ゲート手前までの1時間半が節約できた計算になる。
ただし、身延~奈良田間の林道が土砂崩れで、何と7月17日から通行止めになってました。
もし金曜夜に奈良田まで突っ込むことができていたら、我々のベンツは退路を断たれた形になり、林道の復旧予定である8月13日まで、奈良田の駐車場に一か月間、置きっぱなしになっていたかもしれません。あぶなかった。
◆S藤A子
今まで北岳には3回登っている。夏に1回、冬に2回、苦しい思い出ばかり。
皆に迷惑をかけずに無事、下山できるか・・・不安な一夜を過ごす。
翌朝、テントから這い出ると、朝焼けで空はオレンジ色に染まり、北岳のシルエットが黒々と浮かび上がっている。
ジグザグ道をハァハァ登っていくが、周りの花々が心を癒してくれ、雄大な景色が登りの辛さを忘れさせてくれる。
今回は、そんなにしんどい思いをせずに登頂できた。
日本で二番目に高い山頂からの眺めは、素晴らしいの一語につきる。
遠く北アルプス、頸城、日光方面までよく望める。
ハイカーの一人が「なでしこジャパン優勝!」と声を上げる。
山頂に集っていた人々が「バンザーーイ!おめでとう!」と歓声を上げ、拍手が沸き起こる。
このところ、日本は暗いニュースばかりだった。
久しぶりの明るいニュース、しかも北岳の頂上で、リアルタイムに優勝の瞬間を味わえるなんて!
感動が身体の底からじんわりと湧きあがる。
下山路は、草すべりの急坂を下っていく。ダケカンバの美しい林やお花畑で、山は夏色真っ盛り。
御池小屋でおいしい水を飲んで、アイスクリームをほうばり、しばし大休止。
以前、来た時は、ガスで何も見えなかったけれど、今回は違う。
尾根にぽっかり浮かんだ平坦地に池とお花畑、まるでリゾート地のよう。北岳や鳳凰三山の眺めもゴージャス!
針葉樹帯の急坂をクイズ大会をしながらぐんぐん下る。昨夜の心配はよそに、午前中に下山できた。
ところが、その後の高速道路の大渋滞が核心だった。なんと!
この日、山を歩いていた時間とほぼ同じ時間、車の中にいたのであった。
標高差1500mの沢登りは初めてだ。特に難しい滝やへつりはないけれど、最初から最後まで急登につぐ急登。
稜線直下の草付きトラバースやザレザレ斜面が怖かった。
苦労して勝ち得た眺望は最高だった。久しぶりの夏山の稜線漫歩に大満足!
私的には、虫が飛びかう暗い谷底を歩くより、稜線歩きの方が好きだ。
3日間、天気に恵まれたうえに、北岳に虹というご褒美までいただいた。
◆S口M恵
北岳は一番好きな山だ。まだ子供が小さかった頃は長く家を空けることが難しかったので、3000m級の山なのに朝始発に乗ればその日のうちに肩の小屋に入れる近さは貴重だった。大きくて明るい山で気持ちも明るくなる。
八本歯コースでは乾性のお花畑、草すべり右俣コースでは湿性のお花畑が楽しめて、季節を変えてここを廻れば日本の高山植物がひと通り見れるのではないか。何度も行った。
今回は初めて沢から登った。アイスルート、荒川出合のブライダルベールの上流の沢である。
印象は沢登りというより、沢歩きだったかな。
人によっては2時間かかったという大滝も絶妙な巻でわずか15分で突破できたし、沢特有の暗さが無く、釣り師にヤマメも貰えて、最後の北岳山荘のジョッキ生ビールは最高でした。
◆T山T雄
昔、岳人のグラビアで紹介されていた「細沢」。
カールの花を見にいつか行ってみたいなと思っていたのが今回実現した。
検索するといくつか記録も散見されて様子もわかってきたので、企画立案のみのリーダーとして提案し、決行した。
幸い梅雨も明けて、連日の猛暑・好天に恵まれて雨を心配することもなく予定どおりにトレースすることができてメンバーの皆さんに感謝したい。
テン場からでも標高差1500mのきつい登りは還暦の身には厳しく、他のメンバーから後れることになって迷惑をかけてしまったが、周りのお花畑に慰められてなんとか登り切ることができました。
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