感想:N村Y之
東壁ルンゼを終わった直後「次は雲二」と言葉を交わし、N藤さんとの約束事項になっていました。
頃は9月上旬、日の短くなる前に移動性高気圧の張り出し期待で行きましょと。
最初に雲稜第一を登った5年前に、続けて第二も登る考えはあるにはあったのですが、その時は本命のみで充足してしまいそれきりになっていました。
第二ルート単体に格別魅力があるわけではなく、(衝立の)リスクも知悉してしまえば腰も退けるし執着も湧かない。
しかしながら「第一」があるのは「第二」が存在するからで、その両方を制しないのはどこか片手落ちの気がしてずっと引っかかっていました。
だからこの度も忘れていた夏休みの課題でも片付けるかのように、張り詰める気持ちもなく谷川集中に乗っかりついで、睡眠不足のだるい体を搬んでそれでも昼過ぎには片が付くものと、楽観してタラタラとテールリッジを詰めて行きました。
その日はピーカンで盛夏の如くに日差しは強く、しかも無風で気温は朝から上がり続け、アンザイレンテラスに立つと灼けた岩の熱さに汗が吹き出て止まらない。う~ん、これはヤバいかもと嫌な予感がしました。
ルートはこれからなのに手持ちの水1・5Lの早くも半分を消費し、迅速に抜けないと消耗してしまうでしょう。
そして恐るべき悪さ、たかだか4ピッチほどに時間がかかり過ぎ、前回の反省からの馴れた古いシューズは、ソールが剥がれて持ち主ごと役立たずになってしまいました。
北稜にエスケープする手前のフォロー時に夕立に降られ、しかもピン抜けで墜落。
滑ってフリーでは上がれずにユマーリングでなんとかしのぎました。 それから北稜下降中に日没で真っ暗闇に。
ガスも手伝い視界は利かず、トップで降りた自分は堂々とルートを外して懸垂支点を作りながらなんとかヌメヌメのコップ・スラブに降り立ち、振りむけば略奪点ピナクルまで10メートルでした。
まあ勘は合っていたのですけれど、暗い中の下降はやっぱりアブないですよね。
土合駅でお待ちの皆様方、御心配おかけして申し訳ありませんでした。
感想:N藤S木
話はルートに戻りますが、二人用テラスから雲一と別れて右上するピッチから岩がことごとく浮いていてフレークが剥がれそうでした。そのフレークに乗り越まないと先には進めない。
次のピッチ張り出しの大きなハングは、N藤氏東壁ルンゼ復仇志願のリードでしたが、難しいと言うよりほとんど全部の支点が怪しく恐るべき。「よっく登ったよ」とメンタル誉めて差し上げました。
だから、今回なんか自分で登った気がしません。
それでも二回目はないです。他の人にも勧められないルートでした。皆さん気をつけましょう。
以前、ダイレクトカンテを登っているとき、隣の雲2を登っているクライマーの墜落を目の当たりにした。
長い滞空時間。見ているこっちが腰を抜かしそうだった。世の中には馬鹿な奴がいるものだと感動を覚えたものだが、まさか自分がここを登るとは・・・・・。
3ピッチ目。大ハングの根元で考え込む。相方が不安そうに見上げている。敵前敗退は悔しい。
だけど、見てるだけで抜けそうな支点を繋ぎ無傷で上まで行けるだろうか。 目を瞑る。時間が止まる。音が止む。
だいたいこういうのはクライミングじゃねえんだよ。上手い・下手とは関係無いところで落ちたり死んだりするのって無意味じゃん。
今までいろいろエラソウなことを言ったりもしたけど、撤回してもいいかな。
やっぱり俺は二子とか城山とか小川山、平日はジムでムーブを追求しよう。それが時代ってもんだろ。死ぬのは嫌だ!怖い!安全第一!
もうユガマクとかでトップロープで登っている集団をバカにするのはやめよう。敗退だハイタイ、いい勉強になったよ。敗退決定!
さあ懸垂だ。こんな所二度と来るかよバカヤロー!
すると、天から、神のお告げが・・・・
「能書きはいいから。逃げるな!登れ!」
これまでのクライミングの中で、間違いなくベスト3に入る渾身&豪快尚且つ繊細な登攀が出来たと思う。
とりあえず、今まで言ったエラソーなことはとりあえず撤回しないでおきます。
人工は、忘れ去られていく伝統芸みたいだけど「クラシックルートはこれが出来なければオハナシにならない。」
自分で自分を褒めるなんてバカみたいだが、今回は、「よくやったぞ、俺」と言ってもいいだろう。
とりあえず、ダブル雲稜を落とした。最高だ。それにしても、「濃い」一日だった。
コースタイムと所感(N藤記)
9/10 土合駅→ロープウェイ駐車場→出合→中央稜取付8:00 - 9:00 →アンザイレンテラス9:30 - 9:50 →帯状ハング下(4P終了)17:00位 →北稜17:30位→ 略奪点22:00位 →土合駅25:00位 アプローチ
1P(N藤) 中央稜取付から下りトラバース。50mロープいっぱいで フィックスロープ起点のリングボルト2本の支点まで。 アプローチ2P(N村) ヤブをトラバースの後、アンザイレンテラスまで右上。
1P(N藤) 雲二オリジナルは、アンザイレンテラスから直上だが、支点がなさそう& ほとんどのパーティーが雲一を辿っているようなので、左の凹角の雲一を登る。トポではⅣ+A0だが、フリーで行ける。5.9-10a位。
2P(N村) 二人用テラスから「白い鳥形の岩」を目指して右上。 第1ハング右側の突き出た岩のことらしいが、全然鳥の形をしてない。 フレークがはがれそうで生きた心地がしない。
3P(N藤) 凹角を直上。そして大ハングをダイレクトに直上。凹角は最上段立ちこみ連発。
大ハングはひたすらダイナミックに登るA2。張り出しハンパ無い。支点はボロく、はっきり言って自殺行為。
リング無しボルトに巻かれたスリングはほとんど腐っていて、数箇所ナイフでスリングを切り新しい3ミリスリングに付け替える。このとき誤って手を切り血がドバドバ出て焦る。
生まれて初めて人口ピッチを吠えながら登りました。ここは二子か!
4P(N藤) N村さんのクライミングシューズのソールが剥がれ、N藤がリードを続ける。 トポでは「カンテ状のフェイス凹角」と書かれ、図も直上の様になっているが、 カンテを5mほど登り、支点に導かれ右にトラバースした後、直上。
(「谷川岳の岩場」(山と渓谷社 写真解説・武藤昭/岡田N)を見ると、 このラインで ルート図が書かれている。) 岩も脆く、支点もプアー。そのうえA1とフリーのチャンポン。このピッチが一番恐ろしかった。
下降 終了点から北稜までヤブコギ20分。今回は北稜下降をルートミスし大迷走。土合着は午前様。
・オリジナルを忠実に登りたいという気持ちもあったけど、4P目を登ったら北陵にトラバースする というスタンダード(?)で計画。帯状ハングより上はボロボロだろう。とにかく登れて良かった。
・3PのA2は、ボルト自体は概ね効いている。リング無しボルトに巻かれたボロスリングは ヤバい。要テスティング&固め取り。または、時間はかかるが、スリングを付け替えて登れば 安心。 ハーケンは効いてないものが多い。
・内容は素晴らしいが、クライマーを迎えてない。ビレイ点も風化していた。
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