メンバー:H光(記)、H部、S本
B会では三月の黒部スキー横断以上に恒例となっているGW黒部スキー横断。一週間前にもM氏が金作谷から赤牛岳への横断を成功させている。
個人的には昨年三月に黒部湖スキー横断を成功させているので、今回は山スキー一年目のS本さんを加えて、比較的やさしめの黒部源流部での横断を計画した。
コースタイム:
5/3(土)
6:00駐車地点-6:45飛越トンネル-14:30北ノ俣岳手前ピークC1
5/4(日)
5:00 C1-6:00ウマ沢DP-7:00黒部源流-8:30祖父沢出合-12:00祖父岳-14:10水晶小屋-16:20五郎池C2
5/5(月)
6:00 C2-7:30五郎沢DP-8:15五郎沢2050m付近-10:15湯俣岳-13:10湯俣C3
5/6(火)
8:30 C3-11:30高瀬ダム
記録:
5/3(土)
前夜22時に都内を出発するが、いきなり中央道の20km渋滞で出鼻を挫かれる。やむを得ず上信越方面へ進むが、最初の時間のロスが効いて、飛越トンネル前の駐車地点に到着したのは翌朝の5時。仮眠なしでそのまま出発。
駐車地点から飛越トンネルまではしばしシール歩行。最初の尾根の取り付きだけ板を担ぎ、すぐにシール歩行再開。睡眠不足の所為で、中々ペースが上がらない。
同時に入山した歩きのIさんPと、スキーのKさんPと抜きつ抜かれつしながら進む。
北ノ俣の登りの途中でガスに巻かれ、小雨も降り始める。山での濡れは低体温症に繋がるので、できれば早めに回避したいところ。北ノ俣岳手前のピークに到着するとテントが二張あったので、我々もそこに逃げ込む様に幕営。
濡れた衣類を乾かしながら夕食を摂っていると、いつのまにかガスも取れ、黒部源流の山々がその神々しい姿を表す。
しばしまったりと夕焼けを眺めていたが、日の入りは19時ぐらいだったので、テントを撤収してもう少し先に進んでもよかったかも。
5/4(日)
三時起床。3000m近い標高と稜線特有の強風に、通気性の良いテントと軽量化の為の三季用シュラフは少々相性が悪かった。
皆あまり寝られなかった様だが、明日の天気は壊滅的で、今回のルートを達成する為には今日の内にどれだけ先に進めるかが鍵になる。駄目なら新穂高にエスケープだが、今回の計画は北アルプスを横断する点にこだわりを持っているので、できれば頑張って抜けたいところ。
五時に出発し、すぐに北ノ俣岳山頂。ここから滑降を始め、中俣乗越まで一気にトラバース。朝焼けに染まる北アの山々は最高に美しい。
すこし登り返して黒部五郎の手前から滑降準備。本当は黒部五郎のカールを滑りたかったが、今回はあまり時間をかける訳には行かなかったので、登り返しの時間を惜しんでウマ沢から黒部源流に滑り込む。
早朝の滑降でかなり斜面はカタかったが、すぐに斜度が落ちハーフパイプ状の地形になる。下部は消化試合なので、なるべく上流に行く為に、スキーヤーズライトへどんどんトラバース。
黒部源流はしっかりと水流が流れており、始めは側壁斜面をトラバース気味に進むが、途中から沢沿いの雪面に降りて進めるようになる。一ヶ所ガケになっていたので、高巻きの要領でパスして、再び沢沿いを進む。
ポカポカした日差しの元、まるで沢登りの様な癒し系の山旅を楽しむ。
スノーブリッジを利用して黒部源流を渡り、ここから祖父沢沿いに雲ノ平へ向かって標高を上げて行く。
祖父沢は心配していた沢のワレもなく、快適に標高を上げられる。雲ノ平の脇を通過してからは沢状地形から離れ、今度は祖父岳へ向かって、カリカリのオープンバーンをクトーを効かせながら登る。
祖父岳手前でアイゼンに履き替え、正午ジャストにピークに到着。この辺から曇りがちな天気となり、気持ち的にやや焦りが出てくる。
岩苔乗越を越えて稜線に出ると、ようやく黒部源流を横断した実感が湧いてくる。対岸には今朝いた北ノ俣岳が随分遠くに見える。
ここから水晶小屋までの稜線歩きは岩も結構でているので、ひたすらスキーを担いで進む。八時間行動を過ぎた頃から徐々にメンバーに疲れの顔が見え始めるが、ここは頑張って水晶を越えておきたいところ。
水晶小屋で天気予報を確認すると、やはり明日の天気は壊滅的。本当は水晶岳を踏んでから水晶東面を優雅に滑りたかったが、悪天時の稜線は風雪の威力は勿論のこと、ガスによりパーティの行動が大幅に制限されてしまうので、早めに標高を下げておきたい。
水晶小屋から見る真砂方面の稜線は細く切れていて、通過に時間がかかりそう。ここはやはり東沢谷をトラバース気味に滑るのが最適解か。早速スキーを履いて、小屋下から滑り始める。
東沢谷の源頭はあまり緩んでおらず、一部緊張するポイントもある。少し標高を下げた後、一気に五郎カール目指してトラバース滑降。とは言え、一部ハイマツ帯が上下に長く伸びており、すんなりとは進ませてくれない。
途中で面倒になってそのままハイマツ帯に突っ込んでみたら、意外と簡単にスキーで歩けたので、標高をあまり下げずに五郎カール末端まで到達することができた。ただし高度感のある急斜面を横切るのはあまり快適とは言い難いので、余裕があれば一旦東沢谷沿いに滑り降りて、五郎カールの下部から沢沿いに登り返した方がスマートではある。
五郎カールは雰囲気のあるステキな圏谷で、振り返れば水晶東面~赤牛岳の極上の山肌が広がる。この先の幕営適地まではしばらくかかりそうだったので、本日はここで行動終了とし、五郎池の脇にテントを張る。計約12時間弱の長丁場であった。
夕食はラードたっぷりペミカンカレーで、膨大な量のカロリーを摂取して就寝。
5/5(月)
朝起きるとやはり予報通りの悪天。雪も少々降っているが、視界はまだ大丈夫だったので、午後の寒冷前線通過までに湯俣へ降りられる様、気合いを入れて行動開始。
五郎カールへの300mアップは斜面がカタくて少し大変だったが、雷鳥に励まされながら進む。
真砂沢~野口五郎間の稜線は超強風で一刻も早く標高を下げたいところ。携帯のGPSでドロップポイントを入念に確認し、ガスが薄くなったタイミングで五郎沢に滑り込む。
稜線直下こそ緊張したものの、後は斜度もそれほどでなく、雪も比較的緩んでいて楽しい面ツル斜面の滑降。下部はデブリが増えてきたが、心配していた沢ワレもなく、無事に標高2050mの湯俣岳登り返しポイントの尾根に到着。この下でちょうど沢が割れており、ギリギリセーフ。
二時間程度の登り返しで湯俣岳のピークに到着。ここから登山道沿いの下山となり、上部の薮が濃い地点は板を背負って降りるが、途中の緩斜面帯はスキーで快適に滑る事ができる。
標高1900m付近で雪が切れるので、ここから再び板を担いで下山。徐々に雨も強まってくるが、ここまでくれば湯俣まであと一息。
湯俣周辺は独特の景観で秘境感が強い。13時過ぎに晴嵐荘に到着し、ようやく濡れから解放される。この日の悪天により、全国的に登山者の遭難が多発していた様だ。
夜になって雨脚も落ち着いてきたので、お楽しみの露天温泉風呂に浸かりに行き、じっくりと横断成功の喜びに浸った。
5/6(火)
朝靄の中、五時から一時間半もの間、露天温泉に浸かるという贅沢。この日は帰るだけだが、異常に天気が良くてなんだか勿体ない。
高瀬川沿いの道は始めて来たが、中々風光明媚な道。昔は北アへの入山路としてよく使われていた様だが、最近ではめっきりマイナーな印象。
後半は舗装路の歩きとなり、湯俣から三時間で高瀬ダムに到着。公衆電話でタクシーを呼び、葛温泉へ向かう。
温泉付近は桜が満開で、雪山をバックに桜吹雪が舞い散る様は、なんとも趣深い。宿の雰囲気も中々良かったが、肝心のお湯は熱過ぎて浸かれなかった…。
その後は再びタクシーに乗り、信濃大町から電車で松本へ。
駅前の焼き肉屋で打ち上げをして解散した。
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