メンバー:Y川L、S口
上越の沢はだいたい知っているつもりだったのに、昨年ジロト沢の左俣に来て布晒ノ滝の右俣を見てびっくり。こんな人里近くの渓にこんな巨大な滝があるとは知らず、迂闊だった。
見上げる巨大なスラブから流れ落ちる様は美しく優雅で、天空から白い布を垂らしているいるかのような滝だった。暗さはなく、開放的で見とれてしまう滝だった。でも、私は山屋だから、見るだけでは気が済まない。登れるだろうかとルートを吟味していた。
核心は最下段の滝を越えることにあることは、見てすぐに分かった。帰って、右俣の記録を見る。あるパティーは随分巻いて、滝の落ち口の上に懸垂で降りたようだ。大西さんは左岸の壁を登っている。普通に考えるルートは右岸の中央にある灌木のリッジを登って、右にトラバースして落ち口に上がるラインだろうと思った。ただ、ハング帯の下のトラバースがどんなものかがカギになる。
5/31(土) 晴れ
4:50 林道終点P-6:40 左俣出合-7:30 布晒ノ滝最下段の滝のシュルンド巻き-8:10 灌木リッジ取付-8:40 最下段落ち口上スラブ-13:00 布晒ノ滝落ち口-15:00 展望台-16:50 林道終点
夜中は雷が鳴り、雨も降る天気だったので心配したが、明け方には青空が広がっていた。車を芋川林道の終点まで入れ、遡行を始める。
ジロト沢沿いに付けられた踏み跡はタキ沢を過ぎると、しばらくして沢筋に消えてしまう。沢沿いに進むとまだ5月最後の日だから、大きな支流の合流点では大きなデブリが残っている。昨年の感覚だと1時間程で左俣に到達して布晒ノ滝を見たような気になっていたが、いい加減だった。
2時間ほど歩いてやっと左俣に到着した。布晒ノ滝が目の中に飛び込んできた。雪溶けの影響で水量が多く、迫力がある。青い空をバックに新緑の山肌を穿って、白いスラブの岩肌を高度差260m、長さ300m以上にわたって、白い水しぶきをあげながら落ちている。
左俣のある付近は雪渓が豊富に残っており、布晒ノ滝の手前の20m滝は完全に雪渓の下に隠れていた。雪渓が滝の側壁とつながって いれば、1ピッチ省略して簡単に取り付けるかもと期待したが、そうは問屋がおろさなかった。取り付きたい壁までは大きなシュルント が開いていて、近づけない。
観察した結果、略奪点から落ちるルンゼを少し登ると、シュルントが閉まっていて、小尾根に這いあがれそうだ。ブッシュを頼りにEルンゼ?に向かってトラバースして、ブッシュの濃い場所を使って尾根状を下降する。ブッシュが無くなりそうになったら、Eルンゼに移ってルンゼ内を下降した。
こうして、傾斜が緩くなったバンドに降り立った。バンドを少しトラバースして目標の灌木リッジの下まで行った。しっかりした灌木にビレ支点を設置して、ここから、ザイルを出して登攀を始めることにした。
1ピッチ目 45m(Y川)
親指ほどの太さの灌木を利用してリッジを登る。灌木は細いが、しっかりしている。なんかこのルートは登られているような感じがする。岩登りではなく、全くの灌木登攀だ。
一か所、灌木がなくて、微妙な所がある。手がないので、体を引き上げられない。見ると下の灌木に古い残置シュリンゲがある。シュリンゲに足を掛けて、乗っ越したようだ。枯れ葉に埋もれた土壁を探っていると、左手が岩を見つけた。灌木にシュリンゲを掛けないでも、なんとか体を摺り上げることができた。
そのままバンド状を右上して最下段の滝の落ち口の上のスラブに出た。大き目の灌木まで登ってピッチを切った。
2ピッチ目(S口)
右岸スラブを登る。傾斜のきつい場所もあり、易しくない。灌木にランナーを取りながら伸ばす。
3ピッチ目(Y川)
右岸スラブは傾斜が強く、水流の中の方が傾斜が弱く登り易そうに見えたので、水流の中を行く。これが失敗だった。ヌメって、恐ろしい。カムが効く場所で切ってビレ。
4ピッチ目(S口)
3m程登るもヌメって、この先水流のなかのルートは危険と思えた。一旦クライムダウンして、出直す。
ビレイ点から下降気味にトラバースして右岸スラブに乗り移る。横から見ると傾斜があって、登れるのか不安になる。S口君がどんどん登るので、フリクションが効くようだ。
5ピッチ目(Y川)~10ピッチ目
登るに従って、スラブの傾斜も弱まり、ブッシュも豊富になる。布晒ノ滝の落ち口はトイ状になっていて、ここから水が噴き出ていた。二俣まで上がって、ザイルを外し昼食にした。
ジロト平に上がり、東に進路を取って藪を漕いでいくと展望台や雨量計のある建物が見えた。尾根を下り、左俣を渡り展望台の尾根に上がった。あとは昨年左俣に来た時の下降ルートで林道終点まで戻った。
*この布晒ノ滝の最下段の滝のルートは、今回登ったルートが一番労力が少なく、落ち口の上に出られると思う。岩登りではなく、灌木登りで沢登りをしないとこんな登攀はないので、それなにりにおもしろい。
落ち口から上の右岸スラブは前半4ピッチくらいはそれほど易しくないので、ランナーはしっかり取った方がいい。細い灌木が利用できるが、ない場所もあるので、薄刃のハーケンは必要。カムはほとんど使えない。沢シューズで十分登れるが、クライミングシューズで登れば快適なスラブ登攀ができる。
(Y川)
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