○メンバー
M藤SL、K谷、Y本、I田
○8月12日(1日目)
8月11日深夜1時頃、扇沢の無料駐車場に到着。ほぼ満車状態だったが1台分のスペースを見つけ近くでテント泊する。翌日は7時扇沢発のトロリーバスに。初めての黒四ダムに感激する。
扇沢に到着すると外は雨。雨具を着込み出発する。天気が悪いせいかお盆の時期の割には人が少ない。
12本爪アイゼンで雪渓を慎重に歩き本日の幕営地に到着。
夜、寝袋を車に忘れたことに気付く。1年前。涸沢のテン場でも忘れた悪夢がよみがえる。Y本さん、M藤さんにシェラフカバーを借りて寝る。ん?意外と行けるぞ!?
○8月13日(2日目)八ツ峰VI峰Cフェース剣稜会ルート・Dフェース富山大ルート(晴れ)
13日はこの合宿で一番晴れる可能性が高かった日。予報通り朝から快晴。
我々も慌てて出発の準備。取り付きに向かう途中で4人組がCフェースに向かって上がってくる。I田、M藤が急いで取り付きに向かい、辛くも先頭をゲット!急いで登攀の準備をする。
登る順番は恒例のジャンケンで、M藤→I田→Y本の順に決定。
・1PⅢ級35m(M藤)フェースから凹角を登る。フェース上はどこでも登れそう。支点は浮石が多く、取り付き点に向かって石が落ちるので要注意。
・2PⅡ級40m(M藤)後続が上がってくるので、そのままM藤担当。簡単。
・3PⅢ級40m(I田)支点の少し右側から右上する様に上がる。支点から5m程で本当はリッジに向かって左にルートを取るべきだったが、誤ってそのまま右上。難しくなく、ピンもあるが湿っていてコケも生えている。うーん、おもしろくない!!
・(おまけピッチ)Ⅱ級程度トラバース10m(Y本)元のルートに戻るべく、ハイマツの中をリッジに向かってトラバース。
・4PⅡ級20m(Y本)トラバースで終わりだとかわいそうだと、そのままY本継続。高度感のあるリッジをトラバースぎみに進む。
・5PⅡ級25m(M藤)
後続は取り付きまで数珠つなぎで、大盛況。下降は、Ⅴ・Ⅵのコルに下山する。クライムダウンを交えながら慎重に下る。最後の60mは懸垂2回で降りる。
コルについた時点で11時。まだ時間はあるので、(I田・Y本がいて)慎重なM藤さんを説得しDフェース富山大ルートに向かう。取り付きは長次郎谷に一番出っ張ったカンテ付近。今度もジャンケンで決める。一番難しいはずの3P目はM藤さん担当になり、Y本さん喜ぶ。
◎Dフェース富山大ルート
・1PⅣ級+25m(I田)かぶり気味のフェースを登る。M藤・Y本がちゃかすがI田まったく返事する余裕なし。結局ルート中、一番難しかった!?
・2PⅣ級20m
・3PⅣ級+20m(Y本)凹角を登る。20mを過ぎてもY本登り続け、結局40m程ロープを出す。気付かずに核心ピッチを登る。M藤さん喜ぶ。
・4PⅣ級20m
・5PⅣ級25m
・6PⅣ級30m(M藤)トポ上3Pだが、2Pで行く。特に難しい箇所もない快適なピッチ。雪渓をK谷さんが登ってくるのが見える。
・7PⅡ級30m(I田)傾斜もなく簡単に上がれる。
Dフェースの頭からは、チンネも見える。こちらも数珠つなぎで大盛況の様子だ。
同じルートをたどってⅤ・Ⅵのコルを目指す。
夜は合流したK谷さんと宴会。明日の天気が良好であることを願いながら、その夜は就寝した。
○8月14日(3日目) チンネ左稜線 (曇り)
午前中は曇り午後から雨予報。午前中に抜けるため、まだ暗い内から出発。
途中で2mほど口の開いたシュルンドの間にテントが二張あった。後で聞いた話だと、前日にガイドパーティーの一人の女性が滑落して負傷を負い、その介護しているところで、今日の午前中にヘリで運ばれたとのこと。
池ノ谷乗越しで、アイゼンを一旦はずす。ここで雨がパラついてきたが、午前中にT5の核心を抜けたいので、先を急ぎ取付き点で進退の判断をすることにしたが、しばらくすると雨は止んだ。
落石を落とさないようにして、ザレザレの池ノ谷のガリーを下る。ヘッデンを斜面に向けて踏み跡を丁寧に拾いながら下る。しばらくすると三の窓雪渓へ繋がるコルが見え、そこを乗越したところで小休止。
再度アイゼンを付け、三の窓雪渓をトラバース気味に左稜線を目指して下った。取付き点を少し過ぎたところから、取付き点に繋がる階段状の岩場に難なく渡ることができ、この時点で一番乗りだった(05:13)
ここでアイゼンを取り、ギアを付け、登攀モードに切り替える。
オーダーは、Y本-I田組が先行で、M藤-K谷組が後続とした。
・1P(M藤・Y本)凹角からテラスへ
・2P(K谷・I田)快適なフェース登り
・3P(M藤・Y本)バンドからルンゼ左側の凹角を登って切る。
・4P(K谷・I田)フェースの手前まで行きそこで一旦短く切る
・5P(M藤・Y本)フェース登り。
・6P(K谷・I田)快適な岩稜登り
・7P(M藤・Y本)快適なフェース登り
・8P(K谷・I田)フェースからリッジ上の凹角を登る
・9P(M藤)(Y本→I田)
先行のY本が、ワイドクラックからピナクルへ上がる正規ルートへトライするもワイドクラックへ取り付くトラバースが難しく一旦戻る。
そして、その下にある踏み跡(左方カンテのルート)から、T5の取付き点を目指して中央バンドまで行ったが、そこからT5取り付き点まで戻る左へのトラバースが難しく、残置ハーケンにハーケンを打ち増して懸垂で戻った。
この時点で、かなり時間がかかったので後続のパーティーに先を譲った。
その後、Y本から、左方カンテルート左寄りの上部は階段状になっているとの情報で、M藤が「俺が行く」との(その時は)勇敢な申し出(後で安請け合いに訂正)により、取り付く。
左寄りにルートを取って登ったが、どこにも階段状のステップは見つからず、足元は苔むして手元の抱え込むほどの大きな岩はぐらぐらでさらにハングしていて、これを廻りこんで最後に悪いフェースを登ってT5の支点に着いた。
リードのM藤はいつになくかなり緊張していて、いつものヘラヘラした余裕のムードはぶっとんでいた。それを学習したY本組はさっさと正規ルートへ転進した。
この上部が階段状になっていると説明された意味不明なルートは「Y本左ルート」ということになった。
・10P(K谷・I田)チンネ左稜線の核心(T5)Ⅴ級ピッチ。核心のハングは、上部のガバと足元スメアで乗越す。見た目は、とても登れない感じだが、ちゃんと手があるので快適に登れる。ガスっていて眺望がいま一つなのが残念だったが、雨が降っていないだけ助かった。
・11P(M藤・Y本)フェース
・12P(K谷・I田)フェース
・13P(M藤・Y本)ナイフエッジ
・14P(K谷・I田)やさしいナイフエッジをトラバースして、やさしい歩きをして終了点だが、60m一杯まで引くと、ロープが引けず少し戻って確保。
・15P(M藤)残りを一応確保して終了。
時間を見ると16時、急いで池ノ谷ガリー側に下降するため懸垂の準備をするが、先ほど先を譲ったパーティーのトップが懸垂をしたまま、なかなかコールがかからならい。聞いてみると、先に登山者がおり、落石を落として注意されたそうで、通過待ちをしているとのこと。
我々もロープを出すと、先に懸垂2ピッチ目を懸垂しているパーティーへの落石の危険があるので、自分たちのロープを共用してほしいとのことで、共用させていただいた。そして後から来たパーティーはシングルロープ50mで、これまた共用させてほしいとの申し出で、総勢8人で2ピッチを懸垂した。
実際、1ピッチ目の懸垂は緩傾斜のルンゼを30mほど下降するが、浮石が多く慎重に降りた。2ピッチ目も大きめの浮石が多く、当たったら一溜まりもない。
池ノ谷乗越しに懸垂ポイントが一箇所あるのでロープを持っているI田に先行して行ってもらった。ザレたガリーを登り、ほどなく池ノ谷乗越しに到着。ここで、また8人で懸垂を1ピッチ。
天候は、午後の雨予報にかかわらず、持ってくれてよかった。
テンバで、ビールを一口だけ共用させていただき、本日の無事完登に乾杯して、22:00就寝
○8月15日(4日目) Ⅵ峰Aフェース魚津高ルート (曇り後大雨)
夜間かなりの強風でテントがバタついていたが、朝焼けのきれいな朝だった。
今日はⅥ峰Aフェース魚津高ルートを登って、15時に剣沢まで下る予定。
M藤、Y本、I田は登攀3日目とあって、少々お疲れ気味。M藤は、昨日の「Y本左ルート」の開拓で、もうお腹一杯の様子。
06:20 テンバ発。雪渓を渡ったところでアイゼンをデポして06:58取付き点着。
雨が軽くパラついてきたが、本降りになりそうだったら懸垂下降の申し合わせで登攀開始。
オーダーは、昨日と同じY本、I田組が先行で、M藤、K谷組が後続とした。
・1P(K谷)逆層ぎみなハングを越え、右に左にルートを取ってピッチを切る。
・2P(M藤)フェースを登る。快適。
・3P(K谷)フェースとリッジ登り。
Aフェースの頭に09:19着。ここで雨が降り出す。懸垂2ピッチでⅤⅥのコルに降りる。降りたところで本降り。
途中、I田がバテ気味だったが頑張って剣沢まで歩き通した(13:31)。合流予定のA山パーティーは天候不順のため先に下山とメールを確認した。
これから室堂のトローリーバスの最終の時間も厳しかったので今日は剣沢停滞。
今にも雨が降りそうななか、出発。
05:42剣沢発。トローリーバス第二便(8:45)に間に合うべく室堂を目指すが、メンバーの足が快調で第一便に間一髪で間に合った。07:44室堂着。
トローリーバス、ケーブルカーを乗り継ぎ、09:21扇沢着。一人で待機しているA山さんに無事合流。温泉に入り帰京。
(1日目~2日目 I田 記)(3日目~5日目 K谷 記)
<M藤>
クライミングには最高の環境であった。
真面目なクライマーが多く、夜が早い。皆、日没と同時に就寝する。
担ぎ上げた酒(ビール2,5L、ワインボトル2本、焼酎500ml)を一人で呑み干すには、宴会時間が少々、短いのが玉に瑕。
Ⅵ峰の各フェースは、岩も固く、眼下にベースがある安心感もあり、雄大な景色を眺めながら、爽快なクライミングを楽んだ。チンネ左稜線は霧中であったのが、残念であったが、Y本さんの偽情報により、鼻のテラスに直上するルンゼ登攀を楽しむことができた。渋滞にイライラしている時、前のパーティを抜く事の出来る、このルート(体感Ⅵ、A0 脆+苔)は、良いかも。私は、2度と攀りたくありません。
課題としては、登攀スピードUP。ロープ捌きや支点構築をいくら手早くしても1分、アプローチを頑張っても30分しか短縮できない。とにかく、判断が遅い、攀るのが遅いのを改めないと、宴会時間が減る一方である。
最後になりましたが、岩合宿を企画いただいた、A山さん、S原さん、ありがとうございました。合宿参加の皆さん、ありがとうございました。
<K谷>
なかなか長期の休みが取れず、行く機会がなかった剣ですが、今回4日間の日程を当て、悪天候の合間を縫って、チンネとⅥ峰を登ることができ充実した夏合宿になりました。
チンネは、これまでの会の皆様のトレーニングのおかげとメンバーの助けにより、快適に登ることができ、感謝です。
反省点としてチンネから戻る途中、雪渓の中でヘッデン下山になってしまい、まだまだ自分の技量や適確なアドバイスが不足しており、また時間管理ができず少々反省しています。
そして何より熊の岩と三の窓周辺の岩と雪渓が織り成す景観は、とてもすばらしく心打たれました。
岩と雪の殿堂というだけあって、そこは別世界で、これから年に1~2度は通うことを決意しました。
<I田>
6月下旬から集中的にアルパイン練習・ジム練習・ボッカトレを重ねて、ようやく迎えた合宿。
悪天候の予報の中、辛くもAフェース、Cフェース、Dフェース、チンネ左稜線と大量ルートに登れたのは何よりの収穫だった。但し、ルーファイに時間がかかったり、食事でのエネルギー摂取がうまく行かなかったり、軽量化を怠り最終日にバテたり、総合的に山に体する実力不足を痛感。
今回の山行は剣岳という偉大な山に、改めて登山がどうあるべきかというのを学ばせて貰った。
合宿全体を企画頂いた、A山さん、S原さん。山行中我々を気にかけて頂いたM藤さん、K谷さん。パートナーのY本さん。剣までの練習で一緒だったN島さん、S木さん、皆さんに感謝です。
<Y本>
夏合宿を迎えるまで沢山の事があった。越沢バットレスでのまさかの脱臼。奥多摩、丹沢でのボッカトレ。谷川デビュー。
そして一般道から偵察をかねて初めての剱岳を登った。とうとう迎える夏合宿でしたが、天気予報はいまいち。一日のみは晴れだが残りはどっちに転ぶか分からない。ただA山さんとは初日のみでお別れ。こっちにはサーファーリーダーM藤さんが付いている。これが功を奏して入山日は雨だったが登攀中はなんとか持ちこたえてくれた。
剱岳のすばらしさも実感しました。東京からは遠いが室堂までくれば比較的短いアプローチ。熊の岩まで伸びる雪渓と周り景観に心打たれました。
登攀は目標としてたルートが登れて充実した結果に終わったが、自分では自覚していた登攀力不足をあらためて実感する事になりました。
富山大ルートでは1P目からフリーで登れずA0。2P目のリードではピッチの切り所の判断を誤り、核心3P目と繋げてしまいM藤さんを喜ばせる始末。
チンネ核心手前の9P目で渾身のルーファイミス。悪いトラバースからのワイドクラックを逃げた結果、T5裏のバンドに到着。ピンを打ち足し恐怖懸垂下降。なんとか戻った時には、顔が青白く2時間以上は経過していたとの事。ここで心が折れかけ9P、核心10Pは迷わずA0で切り抜ける。
登攀のグレードを上げて行かなければ、これ以上の難しいルートに挑むのは危険だし楽しめないと感じた、ほんのり苦い思い出のチンネ左稜線でした。
クライミングのまったくの初心者が2年でここまで登れるようになった事に、皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。
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